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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 4-2

第四話『夏休みの学園』 (2)




    3年生の歩さんと別れたあと、俺たちは2年の教室に到着。


涼太  「ういーす」


渚沙  「はよー」


    教室の中にはもうほとんどの生徒が揃っていた。

    みんな、夏休みだっていうのにやる気があるのか、あきらめがついてるのか。




祭   「おー、トガー。おぁよー!」


涼太  「ぐおっ!」


    いきなり、ヘッドロックが!?


涼太  「な、なんだ、おまえももう来てたのか」


    この女の子は、[嵐野/あらしの][祭/まつり]。

    見てのとおりのクラスメイトだ。

    といっても、各学年1クラスしかないから、同い年なら強制的に同じクラスになるんだけど。

    田舎で生徒数が少ないしな。


涼太  「つーか、なんだよ。いきなり」


祭   「たまに友達の首を絞めたくなるときってあるよね!」


涼太  「あるか、そんなの!」


    あと、祭がまったく気にしてないのはわかってるけど、さっきから思いっきり胸が当たってる……。

    あんまり女らしくしろとか言いたくないけど、最低限そういうところは気にしろよ!


涼太  「いいから、離れろって」




祭   「ちぇ、まだ絞め落としてないのに」


涼太  「朝っぱらから落とされてたまるか」


涼太  「しっかし、祭は朝から無駄にテンション高いな……」


涼太  「夏休み前から、補習嫌がってただろ? その割に、きっちり来るんだな」


祭   「来たくはなかったさ! でも来なきゃ退学させられて、実家に就職することになるんだよ!」


涼太  「ん? おまえ、卒業したら実家の手伝いするって言ってなかったか?」


祭   「今はアネーズが偉そうに仕切ってるからなー。きゃつらめが嫁に行ってから、粛々と実家を乗っ取りたいってだけだよ」


涼太  「壮大な野望だな……」


    アネーズというのは、祭の三人のお姉さんのことだ。会ったことはないけど、祭曰く口やかましい人たちらしい。

    うちの姉代わりも口うるささなら、なかなか負けないと思うけど……。


祭   「でもさ、でもさ! なんで夏休みなのに登校しなきゃいけないんだ!」


祭   「私は家めっちゃ遠いし! ここまで来るの、本当に大変なんだよ!」


涼太  「あー、それはな」


    そうだったな、ここは田舎町だけど祭の家はさらにその山奥だ。

    自転車通学でも、かなりの時間がかかってるらしい。


祭   「はー、うちの学園の補習好きは病気だ。夏休みも休ませてもらえないなんて、これじゃ補習じゃなくて捕囚だよ!」




泉実  「はは、まったくだよね」


涼太  「ああ、泉実ももう来てたのか。うっす」


    こいつは、[雨夜/あまや][泉実/いずみ]。

    見てのとおりの女の子――じゃなくて、れっきとした男子だ。

    別に女装してるわけじゃないし、そっちの趣味があるわけでもない。

    でも、顔立ちが綺麗すぎるせいで、未だに女の子にしか見えない瞬間があるくらいだ。

    泉実が入学した直後――体育の着替えで泉実を隔離するか、職員室でマジの話し合いが持たれたという。

    結局、本人は気にしてないので、隔離は無しになったけど。

    ただ、着替えのときは泉実のほうを見ないことが男子生徒たちの暗黙の了解になっている。


泉実  「おはよう、涼。そういう涼はちょっと遅かったね」


涼太  「途中で知り合いに会って、ちょっと話してたんだ」


泉実  「へー。まあ、そうでもなきゃ蒼森先輩が一緒なのに遅れるわけないよね」


祭   「歩先輩も、あんだけ押しが強いんだから、補習なんて悪のイベントを廃止してくれたらよかったのに……」


涼太  「おまえは生徒会長をなんだと思ってるんだ……」


    いくら歩さんでも、そこまでの権限は持ってないからな。


祭   「生徒の味方だろ? 囚われの身の私たちを解放してほしいー!」


泉実  「うーん、嵐野さんを捕まえるにはハンターが必要だろうね」


涼太  「無駄にすばしっこいし、家の仕事で鍛えられてるもんなあ」


    ちなみに、嵐野家の家業は農業だ。

    祭は補習がなくても、毎日早起きして畑や牛の世話を手伝っているらしい。


祭   「そういえば、この前うちの山にハンターが来てたよ。熊が出たって」


涼太  「熊!?」


泉実  「この辺の山に熊なんていたっけ?」


祭   「実はお隣のおっさんが奥さんを熊と見間違えただけだったんだよね。ハッハッハ」


涼太  「田舎ジョーク、凄いな……」


泉実  「僕、あまり山のほうには近づかないほうがいいかな……」




祭   「いつでも歓迎するよー。まあ、男に飢えたアネーズの生け贄にされるかもしれないけどね!」


泉実  「お姉さんたち、熊より怖いなんてオチじゃないよね……?」


祭   「前に、三人でイノシシを捕まえてきたことはあったなー」


涼太  「どこまで本当なんだ、それ……」


    少なくとも俺は、完全武装しててもイノシシが出たら一目散に逃げるぞ。


泉実  「あー、でも勇ましい女の人ってモチーフとしては悪くないかな。戦の女神的な感じで」


祭   「やめといたほうがいいよ、ズミー」


祭   「戦というより、殺戮の女神って感じだよ。やっこさんたちは、たいていの生き物が食べ物に見えてるし!」


泉実  「ワ、ワイルドだね……町から一歩外れると、そんな人外魔境になってるんだ……」


祭   「そこまで言われる筋合いもないけど」


泉実  「あはは、そりゃそうだ。ごめん、ごめん」


祭   「あっはっは」


    祭は怒ってたんじゃないのか。

    相変わらず、コロコロと感情が変わる奴だ。

    ……祭と泉実。クラスだと、よく一緒にいるのはこいつらなんだよなあ。

    渚沙も星里奈も陽鞠も、みんな一緒のクラスだけど、最近は幼なじみでなにかしたり、ってのも減ってきている。

    そのうち二人に関しては、そもそも今この場にいないしな……。

    (to be continued…)