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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 6-2

第六話『日常と、少しの異変』 (2)




    そして、昼休み――

    というか、午後まで補習があるってどうなんだろうな。もう普段の学園と変わりないじゃないか、これ……。


りんか 「補習というより、普通に登校してるのと同じだね」


涼太  「ああ、やっぱりそう思うか?」


りんか 「成績の悪い人だけじゃなくて、基本的にみんな補習受けてるんでしょ? だいぶ珍しいと思うよ」


りんか 「サボってる人も少ないみたいだし」


涼太  「がっつりサボってるのは一人かな。まあ、そいつも――」




涼太  「って、なんで神宮がいるんだ!?」


    つい、普通に会話してたよ!

    いったい、いつの間に教室に入り込んでたんだ!?


りんか 「え? だから観光だって」


涼太  「どこの世界に観光で学園施設に入り込む奴がいるんだ」


りんか 「見るところ少ないから、人がいっぱいいるところならもうなんでもいいや的な?」


涼太  「見所ないのはそのとおりだけど、今時は学園なんて勝手に入っちゃいけないところの代表みたいな場所だからな」


    うちみたいな田舎の学園でも、通報待ったなしだ。



歩   「ああ、大丈夫ですよ。先代の生徒会長特権で立ち入りを許可しましたから」


涼太  「いつの間に、引退した会長にそんな権限が……」


歩   「引退しても権力まで手放した覚えはありませんよ」


涼太  「院政だったのか!?」


    いやいや、歩さんもいつの間にいたんだよ!

    しれっと下級生の教室に入ってきてるのはおかしいだろ!


歩   「それは冗談としても、今は一応夏休みですからね。先生方にお願いしたら、許可が出ました」


りんか 「校門のところから中を窺ってたら、このお姉さんが気づいて入れてくれたんだよ」


涼太  「歩さん、なんでもかんでも拾ってきちゃいけないっすよ」


歩   「蒼森家の門は、誰に対しても開かれているのです」


涼太  「学園の門を勝手に開いちゃダメじゃないかな……」


祭   「あれ、その子誰?」




祭   「つーか、胸でかいな! でかすぎる! なんだそれ、メロンかスイカが詰まってるのか!?」


泉実  「あ、ホントだ。見ない顔だね」


泉実  「ああ、可愛いな。金髪ならもっとよかったのに、遺伝子っていうのは残酷だね」


りんか 「十河君、わたしディスられてるの?」


涼太  「さあ、俺にはよくわからないな……」


    とりあえず、失礼な友人二人からは距離を取っておく。


渚沙  「……あっ、神宮……さん? なにしてるの?」


りんか 「あ、なぎなぎなぎ」


渚沙  「増えてるわよ!?」


りんか 「ていうか、これ呼びにくいね。やめていい?」


渚沙  「あたしが呼ばせてるみたいに言わないで!」


りんか 「わたしのことも、名前で呼んでくれていいよ。なぎなぎとわたしの仲だし」


渚沙  「どんな仲よ! いや本当に、なにしてるの!?」


星里奈 「なんだ、昨日の不審者じゃないか。今度は学園に不法侵入か?」


星里奈 「蒼森家と違って、ここには金目のものなんかないぞ?」




りんか 「うっ……」


    おお、あの物怖じしない神宮が怯えている。

    さすがに、竹刀を突きつけられたのはトラウマになっているのか。


りんか 「そ、そうじゃなくて……ちょっと興味があって……」


星里奈 「興味か」


    星里奈は、なぜか俺たちみんなの顔をぐるっと見渡して。


星里奈 「まあ、都会の学園にもこれだけの奇人変人はなかなか揃ってないだろうな」


祭   「いちのん! みんなのことを奇人扱いはよくない! 私みたいな貴人はともかく!」


星里奈 「わかりにくいボケだな。というか、自分を棚に上げられるところが凄いな」


涼太  「まあ、それが祭だからな……」


渚沙  「祭ちゃん、悪意がないところが凄いわよね……」


祭   「トガー、ひどい! アズまでそんなことを!」


    ちなみに祭は、俺たち幼なじみズを[十河/トガー]、[東/アズ]、[一ノ瀬/いちのん]、と苗字にあだ名をつけて呼んでる。

    この場にいない陽鞠は、[風見/かざみん]だ。


歩   「まあ、いいじゃないですか、皆さん。夏休みなんですし、普段は見ない顔がいても」


歩   「都会のお話も聞けますしね。先生方も、都会の学園の授業のこととか聞きたいらしいですよ」




りんか 「それは全然OKだよ。わたしこれでも、優等生だし」


涼太  「…………っ!?」


    よろめいて、近くの机に腰をぶつけてしまう。


涼太  「ゆ、優等生……!? 馬鹿な……!」


りんか 「この人、めっちゃ失礼です! わたしは傷つきました!」


    唐突に、なぜ敬語なんだ。

    いや、確かに失礼だったかもしれないけど。


涼太  「ああ、悪い。予想外の事態に遭遇すると、つい本音が出ちゃうんだ」


りんか 「失礼を重ねてるようにも見えます」


涼太  「その敬語、なんか怖いからやめてくれ」


涼太  「でも、本当に悪かった。それだけ怒ってるってことは、マジで優等生なんだな」


    なにしろ、初対面が神社でのアレだったからなあ。

    神宮は、それこそ“変人”の印象が強くて、優等生なんて言われてもピンとこない。


歩   「という感じで、涼太さんとはすっかり打ち解けているみたいですよ」


歩   「あらためて紹介しておきましょう、この人は神宮りんかさん」


歩   「観光でこの町にいらっしゃったそうですよ。みなさん、仲良くしてあげてくださいね」


祭   「観光……? それはまた珍妙な」


泉実  「へえ、この町で生まれ育ったけど、観光客なんて初めて見たかも」


りんか 「凄い反応だね……」


    とりあえず、祭や泉実はコミュ力高めだから、すぐに打ち解けそうだ。

    まあ、そう長く滞在するわけでもないだろうから、打ち解ける必要もないかもしれないけど……。

    (to be continued…)