渚沙は明日の仕込みがあるとかで、どこかに行ってしまった。
俺は、川遊びくらいなら特に準備はいらないしなあ……。
涼太 「っと、そうだ。一応、陽鞠の様子も見ておくか……」
歩さんからはしっかり見張っておけ、と釘をさされているし。
陽鞠も戻ってきたばかりだし、あらためて話をしておいたほうがいいかもしれない。
なんの話をするのかって言うと……まあ、それはその場で考えればいいか。
涼太 「おーい、陽鞠。帰ってるのか?」
陽鞠 「はーい、いますけど、ちょっと……あうっ!?」
陽鞠 「わったったーっ!」
涼太 「おっ、おい、陽鞠!?」
ドアを開けて、陽鞠の部屋に飛び込むと――
陽鞠 「わうっ、お兄さん!?」
涼太 「うおおっ!?」
ドアのすぐそばに、陽鞠の姿があって。
その陽鞠が、突然後ろによろめいて――
涼太 「おまえ、なにして……!」
陽鞠 「うにゃーっ!」
陽鞠の肩を掴んだと同時に、そのまま引っ張られるようにして俺も倒れこんでしまう。
陽鞠 「いたた……」
涼太 「っ…………」
やばい、なんだこの状況……。
陽鞠が床に尻もちをついて、俺はスカートの中に思いっきり顔を突っ込んでしまっている。
こんな間近で人のパンツを見たのなんて、生まれて初めてじゃないだろうか……。
陽鞠 「お兄さん、その手……」
涼太 「ん……んん!?」
しかも、陽鞠の胸を鷲掴みにしてしまってるし!
おお、もの凄い大きさと柔らかさが……!?
陽鞠 「……今の状況とは関係ないですが、なぎ姉が陽鞠を“ロリ巨乳”って呼んでました」
涼太 「思いっきり関係あるだろ!」
大きいとは思ってたけど、ここまでとは……。
星里奈や神宮も大きいけど、陽鞠は身体が小さい分、余計に強調されてるっていうか……。
陽鞠 「ところで、陽鞠のおっぱいとパンツをいつまで楽しんでるんでしょう?」
陽鞠 「それとも……陽鞠、犯されちゃいますか? さすがにそれは……」
涼太 「犯さないっ!」
俺は慌てて起き上がり、陽鞠から距離を取る。
陽鞠 「ふう……びっくりでした」
涼太 「そりゃこっちの台詞……いや、悪かった! すまない!」
陽鞠 「いえ、平気です。お兄さんのアグレッシヴさにちょっと驚いただけで」
涼太 「わざとやったんじゃない!」
もし陽鞠へアプローチしてるんだとしても、ドアが開いたとたんに襲いかかるとか、そりゃもう犯罪だ!
涼太 「……っていうか、おまえのそれ、なんだ?」
俺が身体を起こしたのと同時に、陽鞠は背負っていたリュックを下ろしていた。
なんで部屋の中でリュックを背負ってたんだ……?
陽鞠 「これはなんというか……補習用に荷造りを」
涼太 「補習にそんな大げさな荷物はいらないだろ」
めちゃくちゃでかいリュックに、荷物がぱんぱんに詰まってる。
というか、帰ってきてからもう結構経っているはずなのに陽鞠はまだ制服のままだ。……ずっとこの荷造りをしていたのか?
涼太 「と言うかだな、ついさっき、明日は補習ないって話してただろ。ってことは、それ……」
陽鞠 「ぎくっ、ぎくぅっ! お兄さん、相変わらずなんて鋭い……!」
涼太 「陽鞠の言い訳が下手なんだよ……」
涼太 「さてはおまえ、また山に行くつもりだったな?」
陽鞠 「どきぃっ! こ、これは何日分の食糧を詰め込めるか試してみただけで……!」
涼太 「そのまま、山にも登れるか試してみるつもりだったんだろ?」
陽鞠 「もうダメです……お兄さんには嘘をつけません……!」
涼太 「嘘を見抜くのはおまえだろ……。とにかく」
涼太 「この荷物は俺が預かっておく。また山へ捜しに行かされたらたまらないしな」
と、陽鞠のリュックを持ち上げようとして――
涼太 「……って、重っ! なんだこれ!?」
陽鞠 「そうでもないですよ。陽鞠も一応持ち上げられましたし」
涼太 「い、いや、それにしたって重すぎる。何キロあるんだ?」
陽鞠 「軽いです。陽鞠の体重と同じくらいですね」
涼太 「そんなもん持ち上げられるか! 重すぎる!」
陽鞠 「いくらお兄さんでも失礼です! 陽鞠は軽い女ですよ!」
涼太 「その言い回しはおかしい!」
陽鞠は警戒心が薄いから、間違いとも言い切れないところもあるが!
だいたい、人間って体重と同じくらいの物を持ち上げられるのか!?
涼太 「と、とにかくあとで渚沙にでも手伝ってもらって、これは俺の部屋へ運び込んどく!」
陽鞠 「あーん、ひどいですよ、お兄さん」
涼太 「甘えてもダメだ。あと……おまえ、荷物を運び出すまで部屋にいるの禁止。こっそり窓から抜け出しかねないからな」
涼太 「ほら、行くぞ」
陽鞠 「うーっ、お兄さんは鬼ですね……」
陽鞠 「でも、お兄さん……」
涼太 「なんだよ?」
陽鞠 「陽鞠とか、川遊びとか、そんなことより――あの嘘つきのお姉さんのことをなんとかしたほうがいいんじゃ?」
涼太 「どきぃっ……!」
陽鞠 「陽鞠のマネをしないでください!」
陽鞠 「もう、お兄さんはなんか……嘘つきお姉さんのことを先送りにしてる気がするんですよね」
涼太 「ん…………」
あまり意識はしてなかったけど、確かにそうかもしれない……。
神宮りんかのことをもっと探らないとと前々から思ってるのに、具体的な行動に出てない。
俺はもしかして――
真実を知ることを、避けようとしているのだろうか……?
(to be continued…)