special

ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 15-2

第十五話『非情な補習』 (2)




りんか 「んー…………」


りんか 「ああ、またここに来ちゃったか……」


りんか 「どうも油断すると、この神社に来ちゃうなあ。なんか引き寄せられてるみたい」


りんか 「ううーん……どうしようか……」


りんか 「踊る? 踊るの? でも、十河君みたいな[間/ま]の悪い人がまた現れるかもしれないし……」


りんか 「旅の恥はかき捨てって言うけど、恥ずかしいことは恥ずかしいよね……」


りんか 「ああ、どうしたらいいの! 教えて、リョー君!」


渚沙  「リョー君ってなに!?」


りんか 「ぎゃあっ!?」


星里奈 「ふむ……リョー君か……」


りんか 「ぎゃああっ!?」


陽鞠  「やっふー」




りんか 「ぎゃああああっ!?」


涼太  「なにを言われても悲鳴を上げるのか!」


りんか 「リョー……十河君まで出てきた!?」


涼太  「というか、出て行かないと、おまえいつまでも一人芝居続けそうだったからな」


    まったく、人が黙って見ていれば、延々としゃべり続けるんだからな。


りんか 「み、見てた? もしかしてみなさん、ずっと見てたの!?」


渚沙  「見てたというか、待ち伏せしてたわ」


陽鞠  「陽鞠の指示で、身を潜めてました。山のケダモノを回避する技術の応用です」


星里奈 「私は闇討ちは苦手だからな。潜むのは大変だった」


りんか 「闇討たれるような覚えはないよ!」


りんか 「ちょっとミステリアスなだけで、なにも悪いことはしてないのに……なんでこんな目に……」


涼太  「そこまで驚かなくても」


    というか、ミステリアスとか悪いことはしてないとか、自分で言うのか。


涼太  「幸い、最悪の展開は避けられただろ。踊り出す前に、姿を見せたんだから」


りんか 「待ち伏せたりこっそり見られたり、わたしが被害者なのに、なんで偉そうに言われてるの……?」


    神宮は、不満たっぷりみたいだ。

    まあ、長々と演じた一人芝居を全部見られたんだからなあ。


りんか 「っていうか、待ち伏せ? なんでわたしがここに来るの、わかったの?」


涼太  「……神宮、おまえもなんとなくわかってたんじゃないのか?」




りんか 「……もしかして、わたしが喉を一突きにされそうになったときのこと?」


    やっぱり感づいてたか。

    あのとき、星里奈も、割とそれらしいことをしゃべっちゃってたしな。


星里奈 「神宮りんか、今はそのことは気にしなくていい」


星里奈 「それより、この涼太がおまえに言いたいことがあるそうだ。聞いてやってくれ」


渚沙  「……なんか、告白の付き添いみたいね」


陽鞠  「普通、付き添いがつくのは女子じゃないでしょうか」


りんか 「保護者つきの男子は、どんなイケメンでもちょっと嫌かな……」


涼太  「いや、告白じゃないから……」


    なんだかんだで、無駄話をしちゃうなあ。


涼太  「そうじゃないんだよ。ああ、とにかく余計なことは一切忘れて、後回しにして」


涼太  「まず一つ確認させてくれ」


りんか 「な、なに?」


涼太  「神宮りんか。おまえ――なんのためにこの町に来たんだ?」


りんか 「…………っ」


    観光というのが嘘なのは、陽鞠の能力でわかってる。

    人の嘘を必要もないのに暴き立てる趣味はないんだけど……。

    俺と神宮、それに幼なじみの三人……。

    もう、なんの関わりもないと考えるほうが不自然だ。

    ただ、こちらにはこれといって隠してることはない。

    でも、明らかになにか隠してる奴がいる。

    だから――神宮に訊くしかない。


りんか 「……それ、どうしても言わなくちゃダメ?」


涼太  「できれば……いや、どうしても言ってほしい」


涼太  「これ以上先送りにしたくないんだよ。こっちの勝手な都合で悪いんだけど……」


りんか 「むう……」


    神宮は、ちょっと迷うような顔をして。


りんか 「お、おっぱい触らせてあげるって言ったら、引き下がってくれる?」


涼太  「わかった、あきらめよう」




渚沙  「バカなのっ!?」


星里奈 「渚沙の胸で我慢しろと言ってるだろ!」


陽鞠  「お兄さん、たまに清々しいですよね……」


涼太  「じょ、冗談だよ。ちょっと、空気を和ませようと……」


    いや、ちょっぴり本気が入ってなかったとは言えないけど。


りんか 「安心したような、ちょっと納得できないような……」


りんか 「このわたしのリーサルウェポンでも、追求の矛先をかわせないとは……」


涼太  「リーサルウェポンだったのか」


    確かに、かなりの破壊力はあるだろうけど……。

    他のことだったら、あっさり取引に応じてただろうし。


涼太  「頼むから……教えてもらえないか?」


涼太  「言いたくないのはわかるんだが、これ以上放っておけないんだよ」


りんか 「……うん、その気持ちはわかるよ」


りんか 「わたしも正直言うと、黙ってるのが心苦しい」


りんか 「十河君たちは親切だったし、遊びに誘ってくれて嬉しかったし……みんなに黙っているのも……」


涼太  「じゃあ、聞かせてもらえるのか?」


りんか 「無理」


涼太  「即答か!」


    これは教えてもらえる流れだと思ったのに!


りんか 「ダメ。これは教えちゃいけないの。だって、これを教えたら――」


涼太  「どうなるんだよ、本当におまえはなんのために――」


りんか 「ダメ、ダメなの……」


    神宮は、ぶんぶんと首を振って――





りんか 「リョー君、お願い! お願いだから――忘れて!」







涼太  「…………っ!?」




    なっ、なんだ……脳が激しくシェイクされたみたいな……!

    め、目の前が揺れて――

    頭の中が真っ白になって――


渚沙  「リョータ!」


涼太  「…………っ!」


涼太  「お、おお……?」


渚沙  「おお、じゃないわよ。今のあんた、普通じゃなかったわよ。声にならない叫びっていうか……」


涼太  「…………」


    自分じゃ全然わからなかったけど、そんな声出してたのか。

    でも、異様なことが起きたことくらいはわかった……けど。


涼太  「……あれ?」


星里奈 「どうした、涼太。やっぱり、今なにか……」





涼太  「……星里奈。俺、なにしにここに来たんだっけ?」





星里奈 「なに……?」


陽鞠  「お兄さん、なに言ってるんですか……?」


渚沙  「ちょ、ちょっと……神宮さん、あんたなにをしたの!?」


りんか 「わ、わたし……」


    神宮も戸惑ったような顔してる……。

    けどたぶん、神宮が俺になにかをした……それも間違いない。

    いや、そうか、そういうことか……。


りんか 「“にっきけしごむ”……」


涼太  「…………っ!?」


涼太  「…………そのネーミングセンス……」


    やっぱり、そういうことなんだな……。

    それに、たぶん俺がここに来た理由を忘れたのは……。


涼太  「…………っ!」


渚沙  「あっ!?」


星里奈 「むっ……」


陽鞠  「あれ?」


りんか 「あああっ……!?」


    そのとき、五人が同時に反応する。

    これは、いったい――?



    間違いなく、さっきまで誰もいなかった空間に――神宮りんかそっくりの、巫女装束の女の子が現れた。


涼太  「神宮……いや、違う……?」


渚沙  「だ、誰? 誰なの?」


星里奈 「ただ者ではないな……」


陽鞠  「お姉さんより気品があるような……」


りんか 「わたしじゃない……この人、わたしじゃない……よ」


    なんだ、俺はいったいなにを見てるんだ?

    巫女装束の女の子が、境内でたたずんでいる。

    まっすぐな目でこっちを見てる。

    顔にはなんの表情も浮かんでなくて、まるで人形みたいだ。

    どこか異様な雰囲気で、まるで幻みたいに見えるのに、圧倒的な存在感も放ってる。

    矛盾してるようだけど、実際にそのとおりなんだからしょうがない。

    そして――

    気品はともかく、顔は神宮そのものだけど、別人だっていうのもわかる。

    いや……この巫女さんが見てるのは俺なのか?

    俺じゃない、なにかを見ているようにも思える……。


涼太  「…………っ!?」


涼太  「……………………っ!?」


    今度はなんだっ、いきなり巫女さんが消えた……!?


涼太  「俺、なにを見てたんだ……? 誰なんだ、あの巫女さん……」


渚沙  「え、リョータたちにも見えてたの? 神宮さんに似てたわよね、あの巫女さん」


陽鞠  「怪しいキノコも食べてないのに、幻覚を見るのは危ないですね……」


星里奈 「似てはいたが、気配が少し違っていた。あれは……神宮りんかではないだろう」


りんか 「うん……わたしじゃない。わたしじゃないと思う……」


涼太  「待て、ちょっと待て! 状況がめまぐるしすぎてわからない!」


涼太  「一度、状況を整理させてくれ」


    俺の言葉に、神宮も戸惑いの表情を浮かべたまま、こくんと頷いた。

    まず――俺はなにをしにここに来たのか。

    そこから確かめていこう。

    (to be continued…)