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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 15-3

第十五話『非情な補習』 (3)




涼太  「…………なるほど」


    渚沙たちに説明してもらって、神社に来た経緯は理解できた。

    自分から神宮に会いたいと言い出しておいて、忘れるなんてありえないけど――

    それが、“神宮りんかの能力”ならそれも――納得できる。


涼太  「もう、疑いようがないな。俺たちと、神宮はなにか――いや、なにかどころじゃない関わりがある」


りんか 「断言だね。でも……そうかも」


りんか 「さっきのわたしにそっくりさん巫女、みんな見たんだよね」


渚沙  「なんか怖いけど、見ちゃったわ……」


星里奈 「明らかに尋常ではなかったな」




陽鞠  「巫女さんでしたね。うーん、怪しい……」


    やっぱり、みんなも異様さを感じてたんだな……。


涼太  「それにおまえの能力、だろ。“にっきけしごむ”って言ったっけ」


星里奈 「ふむ、涼太の様子を見るに……記憶を消すか、操作する、といったたぐいの能力か」


星里奈 「もちろん、私たち幼なじみにしか通じない能力だろうな」


    他の人で実験したわけではないが、俺もほとんど間違いないだろう、という確信に近い予感がある。

    神宮の能力は、“俺たちと同じもの”だ。


渚沙  「な、なるほど、記憶操作! 星里奈、鋭いわね!」


陽鞠  「いえ、今のは陽鞠でも予想つきましたよ……」


    渚沙……。いや、なにも言うまい。突っ込んでも脱線するだけだし。


りんか 「そうだね、わたしが自分で言ったんだよね……」


涼太  「俺の能力が“こころえのぐ”。渚沙が“ひみつでんわ”、星里奈が“あしたよほう”、陽鞠は“うそおおかみ”」


涼太  「それで、神宮が“にっきけしごむ”。ネーミングも似てるよな」


りんか 「……みんな揃って凄いネーミングだね」


涼太  「しょ、しょうがないだろ。小さい頃につけたネーミングがそのままなんだよ! 今さら変えるのもアレだし!」


渚沙  「いえ、あたしはもっと厨二っぽい名前に変えたいわ」


涼太  「ただし、全員の反対に遭って、今に至ってる。……まあ、名前は気にするな」


涼太  「とにかく――俺たちと同じ能力だろ、神宮のそれも」


りんか 「そう、なのかな……でも……」




星里奈 「……神宮りんか、試みに一つ問いたい」


りんか 「え?」


星里奈 「おまえの誕生日はいつだ?」


涼太  「…………!」


りんか 「は? 誕生日?」


りんか 「10月27日だけど……それがどうかしたの?」


涼太  「…………っ!」


渚沙  「ええーっ」


陽鞠  「あー……」


星里奈 「ああ、やはりそうか」


りんか 「え? どういうこと?」


星里奈 「私たちは――涼太と渚沙と陽鞠と私、この四人は全員同じ誕生日、10月27日生まれなんだ」


りんか 「えーーーーーーーーーっ!」


    そりゃ、そんな声も出るよな。

    しかし、星里奈もよくこの状況でその質問が思いついたもんだ。

    能力と幼なじみってこと以外で、俺たちの共通点が誕生日だったけど。

    今の俺たち、冷静じゃないからな……。

    少なくとも俺は誕生日のことなんて、かけらも思い出さなかった。


星里奈 「同じ日に生まれたことにどんな理由があるのか、そもそも理由があるのか、私たちにもわからない」


星里奈 「ただ……偶然で流せるような共通点でもないだろう」


りんか 「た、誕生日も同じ……」


    ただでさえ、もう状況証拠が揃ってる感じだったのに、さらに補強されちゃったな……。


りんか 「ううーん…………」


りんか 「そっか……じゃあ、もう話したほうが……いいかもね」


    神宮は、俺たち全員の顔をさっと見回してから。

    こくり、と一度だけ頷いた。


りんか 「実はね……ちょっと前に、TVでこの町を見たんだよ」


涼太  「TV?」


りんか 「うん、芸人さんがランダムに決めた田舎町をぶらぶら歩くっていう番組」


涼太  「……なんだそれ?」




渚沙  「そんな番組、あったかしら……?」


星里奈 「私はお笑い番組はマニアックなものまでチェックしてるが、それは知らないな」


    うん、まあ、星里奈の趣味のことはこの際置いておこう……。


陽鞠  「こっちじゃ放送してない番組もありますから。せり姉のチェックから漏れてるのも多いんですよ、たぶん」


りんか 「あれ、あの番組、こっちで放送してないんだ……」


りんか 「そうか、地方によって放送してる番組が違うんだね。それは、考えたこともなかったよ」


涼太  「なんにしても、その番組がどうかしたのか?」


りんか 「うん、その番組に映ったこの町を見て――わたし、びっくりしたんだよね」


りんか 「あっ、なにもなさすぎて驚いた、とかそういう失礼な話じゃないよ!」


涼太  「その付け足しもいらないから」


りんか 「そ、そうだよね。えーと……わたしね、この町を初めて見たはずなんだよ。もちろん、来たこともない」


りんか 「なのに、カメラが進んでいったら、もうどこもかしこも見たことのある景色ばっかりで」


りんか 「デジャヴってやつかと思ったんだけど、それどころじゃなかったんだよ」


星里奈 「どういうことだ?」


りんか 「カメラが映す前に、そこになにがあるのかわかったんだよ」


りんか 「芸人さんが歩いて行く先に、角を曲がった先に、なんのお店があるのか、お店の名前がなんなのか」


りんか 「芸人さんが入っていったお家の苗字がなんなのか」


りんか 「カメラに映る前に、全部わかっちゃったんだよ」


渚沙  「……もし本当にそうなら凄いけど」


陽鞠  「そういう話ってありますよね。私は霊感があります、みたいな」




りんか 「そうじゃないんだよ!」


    神宮は真面目そのものだ。

    というか、さっきから怖いくらい真剣な顔をしてる。

    正直、これがお芝居とは思えない……。


涼太  「って、陽鞠。おまえなら、わかるだろ」


陽鞠  「あ、そうでした。つい、話に聞き入って能力を使ってませんでした」


陽鞠  「というわけで、続きをどうぞ」


りんか 「な、なんか調子狂うな。えー、霊感とかじゃないよ」


りんか 「その番組、家族と一緒に観てたんだよ」


りんか 「カメラに映る前にお店とかお家の名前がわかったのは、本当だって家族は知ってる」


涼太  「……ここじゃ、その家族に確認できないけど……」


涼太  「でも、俺たちには陽鞠がいる。どうだ?」


陽鞠  「……嘘はついてないです。がお」


涼太  「……………………」


    陽鞠の能力は信用できるし、陽鞠自身が嘘をつくことも考えられない。


りんか 「あんまりはっきりわかっちゃったから、気になってしょうがなくて……」


りんか 「この町がなんなのか、確かめたくなったんだよ」


涼太  「それで、夏休みに入るどころか、終業式のすぐあとでこの町に来たのか……」


    どう考えても、夏休みの旅行にしては慌ただしすぎる動き方だしな。

    気になりすぎて、居ても立っても居られなくなったってわけか。


渚沙  「……でも、待って。確かに行ったこともない町のことを知ってたっていうのは凄いけど」


渚沙  「隠すほどのことでもないんじゃない?」


涼太  「それもそうだな。信じてもらえないかもしれないけど、ここまで黙ってることもなかったんじゃないか?」


りんか 「……お姉ちゃんに言われたんだよ」


りんか 「錯覚に決まってるって。それか、他の番組とかネットとかで前に見たことがあっただけだって」


りんか 「でも……絶対違う。絶対、違うんだよ!」


涼太  「…………」


    陽鞠に訊くまでもなく、今の神宮が本当のことを言ってるのはわかる。

    それだけ、神宮の表情や言葉には力がこもっていた。


りんか 「お姉ちゃん、人に話したら変に思われるから言っちゃダメだって」


りんか 「もし錯覚じゃなかったら、それはそれでもっとまずいから、絶対にダメだって」




りんか 「お姉ちゃんにそう言われたら……黙ってるしかなかったんだよ」


渚沙  『……リョータ、どう思う?』


涼太  『……お姉さんっていうのは怖そうだな』


    渚沙の“ひみつでんわ”だ。

    今度は、前みたいにうっかり神宮に伝わってしまわないように範囲を絞ってる。


陽鞠  『姉が怖いっていうのは、なんだか親近感が湧きますね』


星里奈 『歩さんへの不満はあとにしろ。デジャヴでも幻覚でも虚言でもなさそうだ』


星里奈 『で、神宮りんかの目的がわかったところで、新たな疑問が生じたな』


涼太  『ああ……』


涼太  「神宮」


    声に出して、神宮に話しかける。


涼太  「この町に来て、おまえはいろんなものを見たよな」


涼太  「それで、確認は終わったはずだ。おまえが感じたものが、錯覚だったのか、あるいはそれ以外のなにかだったのか……」


    俺の言葉に、神宮は神妙に頷いた。


涼太  「それで……これから、どうしたい?」


りんか 「……なんとなく、わかった。みんなと会って、みんなとわたしに繋がりがあるってわかったから、わかった」


涼太  「わかったって……なにが?」


りんか 「わたしはただ、知ってる景色を確かめに来ただけじゃない。そんなの、もうとっくに終わってる」


    そして――

    神宮は、不意に遠くへ視線を向ける。


りんか 「わたしはたぶん、行かなきゃいけないところがある」


    (to be continued…)