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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 16-1

第十六話『大捜索!』 (1)




    なんというか、当然だよな。

    一生懸命教えてくれてる先生には悪いけど、補習を受けてても内容が頭に入ってこない。

    ううーん……。

    結局、昨日も神宮の件は不完全燃焼のままだった。

    神宮は、“行かなきゃいけないところがある”の後は黙り込んじゃったし。

    あいつも混乱してたから、問い詰めるようなこともできなかった。

    ただでさえ、神宮が黙ってたことを無理矢理聞き出して、悪いことしたからなあ……。

    でも……やっぱり、このままにはしておけないか。





涼太  「…………」


涼太  「……………………」


    よし、脱出成功。

    歩さんか、祭あたりに見つかると騒動になりそうだったけど、華麗に抜け出せたな

    まあ、この状況で補習を受けても無駄っぽいし。


涼太  「さて……」


    ここからどうするか、ちょっと策を練る必要があるな。

    昨日みたいに、上手くあいつに会えるとは限らな――


渚沙  「あっ」


星里奈 「お」


陽鞠  「あれれ」




涼太  「……おまえら、なにしてるんだ?」


    三人同時に、別々のルートから現れたな。


星里奈 「それはこっちの台詞なんだが。生徒会長が学園を抜け出していいのか?」


陽鞠  「そうですよ、陽鞠はともかくとして」


渚沙  「さりげなく自分は問題ないみたいに言わないの」


涼太  「いや、全員問題あるだろ……」


涼太  「特に星里奈と陽鞠! おまえらは何日か補習休んでただろ!」


涼太  「渚沙だって小テストで手こずってたし……」


涼太  「あれ、問題ないのは俺だけか……?」


渚沙  「だから、あんたは生徒会長でしょ! みんなの見本でしょ! 一番問題があるわよ!」


涼太  「突然先代から名指しされただけなのに、見本もなにも……」


    権限もなにもないし。

    渚沙が読んでるラノベみたいに、絶大な権力とかあるなら、見本にでもなんでもなってやるけどさ。


星里奈 「権限はないが、義務はある。サボリがバレても、私たちを代表して会長の涼太が怒られてくれる」


陽鞠  「お兄さんは、いつも頼りになります……」


涼太  「……頼りがいのある男だろう、あはは」


    いやあ、もう乾いた笑いしか出てこないよ。

    まあ、そんなことは本当にどうでもいいんだけど。


涼太  「でも、いいんだな。みんなで――神宮に会いに行くってことで」


    みんなの顔を見ると、三人同時にこくりと頷く。

    やっぱり、みんなもこのまま神宮を放っておけなかったんだな。







涼太  「というわけで星里奈、頑張ってくれ」


星里奈 「悪いが頑張っても、予知は視えない。視えないときは何日もまったく視えないこともある」


    いきなり星里奈にぶん投げてみたけど、あっさり投げ返された。

    でも、昔からそうなんだよな……重要なことはだいたい視える傾向ではあるけど。


渚沙  「星里奈がダメだとなると、涼太……他に当てはあるの?」


涼太  「神社はどうだろう。あいつ、なんとなくあそこに足を運んじゃうみたいだし……」


陽鞠  「タイミングよく会うのは難しいかもですよ。そもそも、町にいるかもわかりません」


渚沙  「SNSで探すのは? 髪型とか年齢とか、情報を拡散して、神宮さんを見つけたら連絡ちょうだい、とか」


涼太  「都会じゃないんだぞ、ここは。10分歩いて、すれ違ったのは猫一匹だし」


    通行人の情報に期待しても望み薄だよなー。

    この町でSNSをやってる人がどれだけいるか、怪しいもんだし。

    そもそも、俺たちの中でもやってるのは渚沙だけじゃないか?


星里奈 「それに、迂闊に個人情報は晒せないだろう。まあ、変なのが寄ってきたら腕にものを言わせればいいんだが」


涼太  「それができるのは星里奈だけだから」


涼太  「原始的だけど、足で捜すしかない。神宮が町にいることを期待して。ああ、手分けしたほうが――」


涼太  「って陽鞠がいない!?」


渚沙  「陽鞠なら、足で捜すって言われたとたんに行っちゃったわよ」


涼太  「普段のんびりしてるくせに、たまに素早いな!」


星里奈 「私も行こう。涼太は渚沙を見ておけ。渚沙は放っておくと、熱中症で倒れるかもしれない」


    それだけ言うと、星里奈もさっさと行ってしまう。


涼太  「……本当にあいつらはマイペースだな」


渚沙  「ま、まあ、あたしだって一人で大丈夫だけど、付き合いのよさではあの二人より上だから!」


    別に威張ることでもないが……渚沙が町中で倒れでもしたら困るな。


涼太  「んじゃ、行くか。俺たちはあっちに」


渚沙  「うん」


    さあ、神宮りんか――おまえはどこにいる?







渚沙  「ど、どこにもいないわ……」


星里奈 「見事に影も形も見えないな」


    およそ3時間後。

    町をあちこち捜し回ってから、成果がなかったのでとりあえず星里奈たちと合流することにした。


陽鞠  「捜してないときは普通に現れるのに、厄介な人ですね」


涼太  「きっぱり言うなあ。否定できないけど」


涼太  「しかし、狭い町なのに、人一人を捜すとなると大変だな。見かけたって人もいないし……」


    神宮は普通に歩いてるだけでも目立つ奴なのに、こんなときに限って目撃者がいないとは。


星里奈 「相変わらず予知は視えない。渚沙が“ひみつでんわ”で話しかけてみたらどうだ?」


渚沙  「近くじゃなきゃ話せないもの。見つけ出すのと大差ないわ」


陽鞠  「能力じゃダメそうですね。まつりんやほたるんにも頼んでみましょうか」


陽鞠  「あの二人にお願いしたら事態が悪化する可能性はありますけど。もうおしまい的なところまで」


涼太  「……えらい言いぐさだけど、それも否定できない……」


    祭は暴走機関車だし、ホタルはネットを駆使してなんかやらかす可能性が高い。

    悪い奴らじゃないんだけどなあ、ブレーキが壊れがちだから。


星里奈 「いや、これは私たちの問題だ」


星里奈 「祭たちに面倒をかけるのは悪い。もう一度捜しに行こう」


涼太  「ああ、そうだな」




陽鞠  「そうですか、それじゃあ、陽鞠とせり姉はまだまだ体力ありますから」


陽鞠  「お兄さんたちは、神社で待ってるといいんじゃないでしょうか」


涼太  「いやいや、そんなわけにはいかないだろ」


    星里奈たちをこの暑さの中で走り回らせて、俺と渚沙だけお休みなんかできない。


渚沙  「そうね。その必要はないんじゃないかしら」


涼太  「ん?」


渚沙  「前の星里奈の予知も、単に都合よく起きたんじゃないのかも」


渚沙  「曖昧な話だけど……縁でもあるのかしら」


涼太  「あ」


    渚沙が、いきなりなにを言い出したのかと思ったら。


りんか 「よかった、見つかった……」


涼太  「神宮!」


涼太  「連絡先を交換してくれ! 電話番号、メアド、メッセージのIDも!!」


りんか 「な、なにいきなり……? なんでそんなに情熱的なの?」


渚沙  「ちょ、ちょっとリョータ。なにしてるの?」


涼太  「渚沙ももう、足で捜すの嫌だろ?」


渚沙  「なるほど、それはやむをえないわね……」


    なにがやむを得ないのかはよくわからないけど、納得してくれたのならありがたい。

    なにかあるたびに町の中を三時間も探し回りたくないからな……。

    とりあえず、俺だけじゃなくて全員が神宮との連絡先交換完了。


涼太  「ふう……これで思い残すことはないな」


星里奈 「待て、なにをやり遂げた感じになってるんだ。神宮りんかと番号を交換しにきたんじゃないだろう」


涼太  「あ、そうだった……」


    会うのに時間がかかったせいで、すっかり目的達成した気になってた。




りんか 「それで……わたしも、ちょっと情熱的になっていい?」


渚沙  「な、なにをする気?」


    なぜか、渚沙が警戒してる。


りんか 「わたし、みんなを捜してたんだよ」


涼太  「そっちも……?」


    そういえば、さっき“見つかった”とか言ってたな。


涼太  「どういうことだ? こっちも神宮を捜してたんだけど」


りんか 「うん、なぎなぎを見たらそれはよくわかるよ。制服が汗で張りついて、なんかエロいし……」


渚沙  「なっ!?」


りんか 「でも、そんなことは後回し」


渚沙  「そんなこと!?」


    辱められた上に、どうでもいい扱い……。


涼太  「じゃあ、なにを先に回すんだ?」


りんか 「思い出してきたんだよ」


涼太  「思い出してきた……?」


りんか 「一緒に来てほしいんだよ」


りんか 「一緒に、ついてきてほしいんだよ……リョー君たちに」


涼太  「…………」


    不思議と、誰も声を出して反応しない。

    なんだろう……情熱的、というのとはちょっと違う。

    神宮りんかに、なんというか――逆らいがたいものを感じてる。

    もしかして、俺だけじゃなくて、みんな同じなのかも――

    (to be continued…)