special

ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 1-3

第一話『三つの初恋』 (3)




    午前中の商店街は閑散としていた。


りんか 「おー、すいてる! これならのんびり買い物できるね」


涼太  「ていうか、このド田舎で賑わってることもないけどな」


渚沙  「シャッターが閉まってないだけまだマシってもんよね……」


りんか 「ならリョー君が町長に立候補して、この町を盛り立てようよ!」


涼太  「町長って……。話飛びすぎだろ」


りんか 「でもリョー君ってリーダーに向いてそうじゃない? 現に今も生徒会長なんでしょ?」


涼太  「うちの生徒会長はリーダーシップとか関係ないから」


りんか 「そうなの?」


涼太  「ただの雑用係みたいなもんだよ」


りんか 「えー!? じゃあ裏帳簿とか献金とかは?」


涼太  「そんなもんあるかっ!」


りんか 「ふーん。でも雑用係ってわかってたのに引き受けたんだ?」


涼太  「うちの生徒会長は前任者からの指名制だからな」


りんか 「前任者?」


渚沙  「歩姉さんよ」


りんか 「あー! なるほど!」


りんか 「ふむふむ。リョー君はああいう年上のお姉さんタイプに弱いのかな?」


涼太  「なんでそうなるんだよ。普段から世話になってたら普通断れないだろ」




りんか 「ええ~。どうかなぁ~、コノコノ~」


    鬱陶しいのでノーコメントだ。


渚沙  「…………」


りんか 「なぎはどう思う? リョー君のタイプ」


渚沙  「…………」


りんか 「……なぎ?」


渚沙  「…………」


涼太  「……もしかして、どこか具合が悪いのか?」


渚沙  「え!? な、なにがっ!?」


涼太  「いや、なにがって……」


    わざわざ買い物についてくると言い出したり、今日の渚沙はちょっと様子がおかしいような……。


渚沙  「そ、それより、りんかはなにが欲しいんだっけ!?」


りんか 「う、うん。とりあえず日用品かな。歯ブラシとかタオルとか」


涼太  「ああ。歯ブラシとかは宿にあるもんな」


渚沙  「タオルならあそこのお店で売ってるわよ。ちょうどワゴンセールをやってるみたい」


    渚沙が指差した日用品雑貨店の前に、ワゴンが出ていた。雑多な商品が山のように積まれていて、その中にはタオルもある。


りんか 「安いのは助かる! じゃあどれにしようかな~」




渚沙  「あ、これとかいいんじゃない? クマちゃん柄の」


りんか 「ちょっと子供っぽすぎないかな……?」


渚沙  「そうかな? 可愛いと思うけど」


涼太  「確かに渚沙にはいいけど、りんかにはちょっと子供っぽいかもな」


渚沙  「ムッ! それどういう意味よ? あたしが子供っぽいっての?」


涼太  「いやいや、渚沙とりんかじゃタイプが違うだろ?」


渚沙  「それは、そうだけど……」


涼太  「りんかにはこっちのはどうだ?」


渚沙  「え゛!? なにそのアバンギャルドな柄! 大阪のオバチャンみたいじゃないの」


りんか 「あ、それわたしもいいと思った!」


渚沙  「げっ!? まさかの!?」


涼太  「こういうの、りんかが好きそうだよな」


涼太  「あとほら、そっちのウーパールーパーのワンポイント柄のやつとか」


りんか 「それもいいね!」




渚沙  「……マ、マジ?」


りんか 「ん? ダメかな?」


渚沙  「ダメってことはないけど……」


りんか 「じゃあこれにしよっと!」


    りんかは今の二つと、もう一つ最高にご機嫌な柄のものをレジへ持って行った。


りんか 「お待たせ~、買って来たよ」


涼太  「次はなんだ?」


りんか 「次は……」


    そう言いかけて、りんかはなぜか顔を赤らめる。


涼太  「次は?」


りんか 「つ、次はリョー君はいいから……」


涼太  「いいってなんだよ? 自分で付き合えって連れてきたくせに」


りんか 「そ、それはその……女の子には色々あるのよ……」


    りんかは、赤い顔のままゴニョゴニョ言う。


涼太  「……ああ、下着か」


りんか 「ななななななっ!? どうしてわかったの!?」


りんか 「まさかリョー君もなぎみたいにテレパシーを!?」


涼太  「いや、テレパシーなんてなくてもわかるだろ。おまえ、どっちかっていうとわかりやすいし」


りんか 「むっかー。わたし、わかりやすくなんてないし! わかりづいら女だし!」


涼太  「わかりづらい女ってなんだよ……」


りんか 「そうだねぇ、察しの悪いリョー君にもわかりやすいように言うなら……」


りんか 「……わたしはミステリアスの塊のような女だよ?」


涼太  「ミステリアスな女は自分で自分のことミステリアスとか言わないけどな」


りんか 「リョー君の歪んだ女性観なんてどうでもいいよ」


涼太  「おまえに俺のなにが分かるって言うんだよ!?」


りんか 「あはははははっ」


    快活に笑われた。わりと傷つく。


りんか 「冗談冗談。デリカシーなく図星を突いた仕返しだよ」


    くっ。そう言われてしまうと男としては反論しづらい。


りんか 「そんなことより、だよ。なぎ」


渚沙  「……え? あ、うん。なに?」


りんか 「えっとね……下着とかって、いつもどこで買ってる?」


    りんかは俺の方を警戒するようにうかがいながら、渚沙に小声で訊いた。


渚沙  「んー、この辺では、だいたいみんなあそこの洋品店で買ってるよ」


    渚沙が指を差す。この道をしばらく行った先に、うちの女性陣がちょくちょく出入りしている洋品店があった。


りんか 「ほうほう」


渚沙  「都会のお店に比べたら品揃えは劣るだろうけど、別にそんなに悪くない……と思うわ」


涼太  「りんかはどんなのが欲しいんだ?」


りんか 「そうだなあ、学生だから清潔感が第一だけど、やっぱり多少はオシャレもしたいから……」




りんか 「って、さりげなく女の子のブラの趣味を聞き出そうとするなーーーーーーーーー!!」


涼太  「今のはおまえが悪いだろ!?」


りんか 「リョー君はいいから! なぎ、付き合って!」


渚沙  「え? あ、あたし?」


りんか 「リョー君はここで待っててね! じゃあ行こ!」


渚沙  「あ、ちょ、ちょっと……!」


    りんかは渚沙を引きずるようにして歩いて行く。


涼太  「元気にブラジャー買いに行ったなぁ。……俺は来なくてもよかったんじゃないか?」


    その後、二人が店から出てくるまでたっぷり2時間以上待たされた。

    女子の買い物、長げぇ……。

    (to be continued…)