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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 7-3

第七話『ラノベみたいなハッピーエンド』 (3)




りんか 「あー、えっと……」


りんか 「田舎の学校ってセキュリティ甘いんだね。入ってきても誰にも止められなかったから……」


    だから、勝手に入って来たらしい。


渚沙  「と、都会の学校って誰でも入れないの?」


りんか 「無理無理。入口で警備員さんに止められるよ」


渚沙  「へ、へえ~……そっちの方が驚き……」


りんか 「最近は“人を疑う”が都会のスタンダードだからね。すっかり人と人の繋がりが希薄になってねぇ……」


渚沙  「なるほど、コンクリートジャングルってやつね……」


    なんだこの会話? お互いに動揺して、わけわからないこと喋ってるぞ。


涼太  「ていうか、そもそもどうして来たんだ?」


りんか 「別に理由があったわけじゃないけど、強いて言うなら退屈だから?」


りんか 「みんな、もうすぐ補習が終わる時間かなぁって思ったし……」


りんか 「みんながどんなところで勉強してるのかなっていうのも興味あったから……」


りんか 「来てみたらすんなり入れちゃったから、入ってみましたー」


りんか 「みたいな感じでした。まる」


    要は、退屈で興味本位で来ただけってことか。でも、そうしたら……。


りんか 「まさか二人が逢引きしてるところに遭遇しちゃうとはね……」


渚沙  「あ、逢引きって……いつの時代の言葉よ」


りんか 「じゃ、じゃあ……デート?」


渚沙  「そ、それは……」


    渚沙が口ごもる。そして困った顔で俺の方を見た。

    まあ、ここまで知られちゃったなら、今更誤魔化すこともない、か。


涼太  「つまり、そういうことなんだ」


りんか 「そういうことって……。リョー君がなぎのことを好きだっていうこと、だよね?」


涼太  「もちろん」


りんか 「そ、そうなんだ? じゃあ……」


涼太  「ああ、実は俺と渚沙、付き合うことになったんだ」


    俺も他の人にはっきりと言うのは、さすがにちょっと恥ずかしい……。



渚沙  「………」


    渚沙も、顔を赤らめて恥ずかしそうに俯いている。

    りんかはそんな渚沙と俺を、少し戸惑ったように見つめていた。


りんか 「そ、そうなんだ……」


    でも戸惑ったのは一瞬で、すぐにその顔に笑顔を浮かべる。


りんか 「なーなんだ! それならそうと早く言ってくれればよかったのに~」


渚沙  「ごめん……でも、まだホント、そういうことになったばっかりで」


りんか 「ま、まあ、気持ちはわかるけどね。自分たちから付き合い始めましたー、なんて言いにくいよね」


渚沙  「う、うん、なんかね……タイミングがね……」


りんか 「うんうん、タイミング大事だよねー」


    二人ともぎこちない笑顔で、交わす言葉もどこか空々しい。

    俺も、こんな形で俺たちのことを、りんかに報告することになるとは思ってなかったから、まだ戸惑いを拭いきれない。


りんか 「そっか、リョー君となぎは好き合ってたんだね」


涼太  「あ、ああ……。実は、そうなんだ」


りんか 「そっかそっかー、それはおめでた……」




りんか 「……あ、あれ?」


    ふと、りんかが不思議そうに首を傾げた。


渚沙  「ど、どうしたの……?」


りんか 「えっと……あれ? え?」


    なんだかわからないが、戸惑っているみたいだ。一体どうしたんだろう。


りんか 「……あ」


    りんかの目が大きく見開かれた。その目がまっすぐ俺を見つめる。

    こちらまでギクリとさせるような真剣な目だ。


涼太  「ど、どうした?」


りんか 「え、あ、えっと……」




りんか 「リョー君、わたしね……」


涼太  「ん? なんだよ?」


りんか 「あ、あの、その……」


りんか 「お、おめでとう!!」


    りんかがたどたどしく言った。


涼太  「あ、ああ、ありがとう……」


    それだけのことを、あんなにも言いにくそうにしてたのだろうか?


りんか 「ちょっとビックリしちゃっただけだよ。それだけ!」


りんか 「二人がわたしより先に恋人作って幸せになるなんて、ちょっと悔しかったからさ~」


    りんかは笑顔を見せる。でも、その笑顔は、どこか無理して笑っているように感じられた。

    俺と渚沙が付き合い始めたことに戸惑っているんだろうか。でもそれだけにしてはなんか……。


渚沙  「……りんか」


    渚沙が、なにかを見極めようとするようにりんかの顔を見つめた。

    りんかは、気まずそうに目を逸らす。


渚沙  「………」


    そして、数秒遅れて渚沙もりんかから目を逸らす。

    なんだろう、今の……。


りんか 「ほんと、おめでとう」


渚沙  「う、うん……ありがとう」


    渚沙は、笑顔になってそう言った。その笑顔もどこかぎこちないような……。

    なにか、俺にはわからないことが二人の間で起こっているのだろうか?


りんか 「あー、それじゃ、わたしは帰るね。……二人は?」


渚沙  「あたしたちは、もうちょっといる……かな?」


    同意を求めるように、渚沙が俺を見た。


涼太  「そうだな。……本、途中だったし」


りんか 「そっか、わかった。じゃあ先帰ってるね~」


涼太  「ああ、気をつけて帰れよ」


りんか 「子供じゃないんだから大丈夫だよ。んじゃまたあとで」


    りんかが、逃げるように図書室を出て行く。

    その後には、微妙な空気が残った。


渚沙  「……りんかに、バレちゃったね」


涼太  「まあ、きっかけになってよかったんじゃないか?」


    本当にそうなのかはわからなかったけれど、ポジティブに考えてみる。



渚沙  「うん、そうだね……きっと……」


    でも、渚沙の反応はどこか上の空だった。

    (to be continued…)