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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 8-1

第八話『はじめてのラヴをあげる』 (1)




    ――翌朝。


歩   「朝ごはん、できましたよ~」


陽鞠  「はいはい! 待ってました」


星里奈 「がっつくな。はしたない」


    みんながめいめい朝食の席に着く。

    だが、その中にりんかの姿がなかった。


涼太  「あれ? りんかはまだ起きてこないのか?」


渚沙  「あれ、そういえばいないわね」


涼太  「……しょうがない奴だな。ちょっと起こしてくる」


渚沙  「え? リョータが行くの?」


涼太  「うん??」


    なにかまずいのだろうか?


渚沙  「いや、だって……」


歩   「夜這いならぬ朝這いとは、涼太さんもなかなかやりますね」


涼太  「朝這いってなんだよ、朝這いって」


歩   「でも、男の子は朝は元気ですから」


涼太  「朝から下ネタ禁止!!」


歩   「まあ、固いですね。朝だけに」


涼太  「こっちが照れるわ!!」




渚沙  「で、でも、年頃の女の子が寝てる部屋に男子が入って行くのは、やっぱりマズイんじゃないかしら?」


涼太  「そういうもんかな……」


涼太  「じゃあ、渚沙が行ってくれるか?」


渚沙  「え、あたしっ!?」


涼太  「そんなに驚くことか? 女同士だからいいだろ?」


渚沙  「そ、それは、そうだけど……」


    と言いながらも、戸惑っている様子だ。


渚沙  「う~ん。……まあ、わかったわ」


    そう言って渚沙が腰を上げたとき……。


りんか 「ふぁ~……おはよ……」


    眠そうなりんかが姿を現わした。


星里奈 「モタモタしてるうちに自分で起きてきたか」


渚沙  「ほっ……」


りんか 「なになに? わたしのこと話してたの?」


歩   「もうちょっとで涼太さんが朝這いに行くところでしたよ」


りんか 「朝這いって……なに?」


渚沙  「あ、歩さんってば!!」


涼太  「ていうか、ずいぶん眠そうだな。目が赤いぞ?」


りんか 「んー、昨日もちょっと寝付けなくて」


星里奈 「ほう? なにか悩みでもあるのか?」


渚沙  「な、悩み……」


りんか 「悩みっていうか……。まあ、わたしもごくたまには考えごとぐらいするのよ」


歩   「もしかして、恋のお悩みですか?」


渚沙  「え……」


りんか 「あはは、それは乙女のシークレットってことで」


星里奈 「乙女とは大きく出たな」




りんか 「なんでよ!? 立派な乙女でしょーが!?」


涼太  「りんかが考えごと、か……」


    りんかに渚沙との恋人付き合いバレてしまっての昨日の今日だ。

    なにを考えていたのかは知らないが、恋にまつわることだったのは、もしかするとあながち見当はずれではない、のかも……。


りんか 「で、みんなは今日も補習?」


陽鞠  「いえ、今日はお休みです」


涼太  「いやいやいや、勝手に休みにするな。今日も補習だろ」


陽鞠  「え……?」


    本気で驚いた顔をする陽鞠。


星里奈 「もしかして本気で休みだと思い込んでいたのか?」


陽鞠  「はい……」


涼太  「都合のいいように記憶を改ざんするなよ」


陽鞠  「生命の危機を察知した、陽鞠の本能のなせるわざかもしれません」


涼太  「補習のやりすぎで生命の危機を感じるな」


    連日の補習がトラウマになったらしい。まあ気持ちはわからなくはないが。


りんか 「そっか。休みなら、ちょっとリョー君と話したかったんだけどな」


涼太  「俺と? なんの話だ?」




りんか 「あー、いいのいいの。それならまた今度で」


涼太  「そうか?」


    渚沙とのことに関係する話……だろうか。

    みんなの前では言いにくい内容なのかな。はぐらかされると余計に気になる。


渚沙  「………」


渚沙  「んん。ほ、ほら、早く食べないと遅刻するわよ」


陽鞠  「じゃあゆっくり食べましょう」


星里奈 「確信犯的に遅刻しようとするんじゃない。さっさと食べて行くぞ」


陽鞠  「うわーん、陽鞠を山へ帰してくださーい!」


    (to be continued…)