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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 10-8

第十話『好きで、好きで、好きだから…』 (8)




りんか 「あっ。おかえり、二人とも」


    帰ると、居間にはりんかが一人でいた。


渚沙  「た、ただいま……」


涼太  「りんか……一人か?」


りんか 「う、うん、みんな部屋。夕飯、もうすぐできるって」


涼太  「そ、そうか」


    不意打ちでりんかに会うと、どうしても神社での話を思い出してしまう。

    りんかが俺のことを好きだということ。そして、それを俺に告白しようとしていること……。

    ただ、あのときりんかは、まだなにかを渚沙に伝えようとしていた。渚沙は話を最後まで聞かなかったが……。

    ……りんかは結局、なにをしようとしているのだろうか?


りんか 「それで……その……。なぎ?」


渚沙  「な、なに……?」


    昨日の神社の雰囲気を引きずっている二人は、会話をするにもどこかぎこちない。


りんか 「あの……できればまた、二人きりで話がしたいの」


渚沙  「え……」


りんか 「お願い……。昨日は、ちゃんと話を伝えきれなかったのっ」


りんか 「もう一回、わたしに説明するチャンスをちょうだい?」


渚沙  「それは……その……」


    渚沙がちらりと俺の方に視線を寄越す。

    正直、りんかがなにかを企んでいるなんてことは、考えがたい。だったら……。


涼太  「なんの話かわからないけど、話くらい、聞いてあげればいいんじゃないのか……?」


りんか 「リョー君……」


渚沙  「リョータ……」


渚沙  「うっ、ううぅ……」


りんか 「なぎも、そんなに警戒しないで? わたし、なぎの嫌がること、するつもりないよ」




渚沙  「う、嘘よ……。だってりんか、リョータにっ……」


りんか 「うん。だからその件について申し開きと言うか、もう少しだけ話を聞いてほしいな?」


渚沙  「い、いやよ。あたしはりんかと話すことなんて、なにもないわ……」


りんか 「誤解があるんだよ……。わたしの説明が悪かったの。なぎは絶対に誤解してる」


渚沙  「ちょ、ちょっと……。その話を今ここでする気……?」


    渚沙はちらりと俺の顔を見てそう言った。


りんか 「う、ううん。もちろんしないよ。……だから、二人きりで、もう少し話をさせてほしいの」


渚沙  「でも……あたしはりんかに話なんて、ないもの……」


りんか 「お願いだよ、なぎ。……ほ、ほら、りんかは怖くないよ? 安全だよ?」


渚沙  「……うぅぅ、やだっ! りんかの話なんて聞きくないっ!」


涼太  「あっ、おい、渚沙!?」


    渚沙は捨て台詞を吐くと、そのまま走って自分の部屋まで逃げ帰ってしまった。




りんか 「あっはは……。逃げられちゃった、ね……」


涼太  「まったく……渚沙の奴」


    あいつ、本当にさっきの告白の意味、わかっているんだろうか……?

    りんかの話がなにかはわからないけど、俺が渚沙を確かに好きなら、渚沙がなにかを不安がる必要はないのに……。

    なんだか、まだまだこの先波乱の予感がして、俺は思わず頭を押さえてしまった。

    (to be continued…)