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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 11-3

第十一話『たとえヒロインになれなくても』 (3)




涼太  「こんなところにいた……」


渚沙  「あっ。リョ、リョータ……」


涼太  「不良娘……。補習始まってるぞ」


渚沙  「うん……」


    渚沙は気のない返事をして、それ以上反応しない。

    あれから結局、逃げ出した渚沙は学園まで走って逃げて行った。

    俺とりんかは必死で追いかけたものの、渚沙が学園内に入っていったのを目撃したあとは、完全に姿を見失っていた。

    その後、俺とりんかは手分けして学園内をしらみつぶしに探し回って、今に至る。


涼太  「なあ……そっち、行っていいか?」


渚沙  「別に……いいけど」


    渚沙も、少し落ち着いたのか、見つかったからと言って逃げ出したりはしなかった。


涼太  「じゃあ……隣、失礼するぞ」


渚沙  「……ん」


    渚沙の声は素っ気ないけど、拒絶する感じでもなかったことに少しだけホッとする。


涼太  「…………」


渚沙  「…………」


    ただ、俺もなにを話していいのかわからず、ただ無言で渚沙の隣に座るだけ、というよくわからない行動をしてしまう。


渚沙  「…………」


渚沙  「…………」




渚沙  「それで……りんかとは、なにを話してたのよ?」


涼太  「あ、ああ……」


    言葉を探しながら渚沙の横に座っていると、ありがたいことに渚沙の方から話を振ってくれた。


涼太  「その……りんかが言ってた通りではあるんだけど……」


涼太  「渚沙と上手く話ができない状態になっちゃったから、仲を取り持ってほしい、みたいな……」


渚沙  「ふーん……」


    だいぶ意訳してしまったが、間違ってはいないはずだ。


渚沙  「そんな話を、りんかとしてたんだ……」


渚沙  「“ひみつでんわ”にも、気付かないほど熱中して?」


涼太  「うっ……。それは、すまん……」


    というか、意訳する必要、あったのだろうか……?

    実は、りんかに相談された内容を、そのまま渚沙に教えればいいんじゃないか?

    勝手に話されることは、りんかとしては本意ではないかもしれないが……。

    りんかに俺と付き合う気がないことが渚沙に伝われば、色んな問題が一気に解決するのだ。

    もう一刻も猶予はない……と、思う。

    というわけで。……許せ、りんか。


涼太  「……ただ、その……それだけじゃなくて、もう一個、実は本題があってだな」


渚沙  「……え」


    俺の言葉に渚沙がさっと顔を青くする。


涼太  「そ、そんな不安そうな顔、するなよ。変な話じゃないんだ……」


渚沙  「……ん……んん」


涼太  「実は、その……結局は同じ話なんだが……りんかからの相談、というか、提案があって……」


    確信を突く言葉の前に、緊張で生唾を飲んだ。


涼太  「……りんかは、“渚沙の前でわたしのことを振ってくれ”って言ってきた」


渚沙  「……え」


渚沙  「っ……な、なによそれ! こ、告白されたってこと!?」


涼太  「ち、ちがう! なんでそうなるんだよ」


渚沙  「だって……」


涼太  「りんかは振ってくれ、って言ってきたんだぞ?」


渚沙  「つまり、リョータが好きって、言ったってことでしょ……?」


涼太  「そ、それは……」




渚沙  「……やっぱりりんか、あたしに隠れて告白してたんだ……」


涼太  「だから、違うんだ……。その、俺が神社の件を盗み聞きしちゃったことを謝って……そこから」


    渚沙は、その言葉に安心するどころか、一層顔を青くしていた。


渚沙  「りんかは……もう、そんなことまで、知ってるの……?」


涼太  「ま、待て、渚沙。……待ってくれ」


    やばい。話が圧倒的にこじれてしまっている。

    俺は、自分がなにか致命的な判断ミスをやらかした、ということにようやく気が付いた。


涼太  「と、とにかく……りんかは告白してないし、仮にされても関係ない!」


涼太  「俺が好きなのは渚沙、おまえなんだから!」


渚沙  「っ……。そんなの……」


渚沙  「そんなの、わかんないじゃない!!」


涼太  「……え?」




渚沙  「今のリョータはりんかへの気持ちを忘れてるだけ! 思い出しちゃったら、あたしはりんかに勝てない……」


    渚沙はそう言って、ポロポロと涙をこぼし始めた。

    (to be continued…)