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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 11-5

第十一話『たとえヒロインになれなくても』 (5)




    図書室をそっと覗く。

    そこには、予感した通り渚沙とりんかがいた。見るからに険悪な空気が漂っている。

    すぐに飛び出そうとしたが、ふと先ほどの失敗が頭をよぎり足がすくんだ。

    ……俺がもたもたしているうちに、りんかが口を開く。


りんか 「ま、待って、なぎ。落ち着いて……? その、話を聞いてほしいだけなんだよ」


渚沙  「それは、今じゃなきゃダメなの……?」


    渚沙の声はどこか追い詰められた感じがして、今にも泣き出しそうに聞こえた。


渚沙  「嫌なの、本当に……。今は、一人にさせてほしいのよ」


りんか 「い、今じゃなきゃダメだよっ」


りんか 「なぎ、話そうとすると逃げちゃうし……誤解をこれ以上放っておけないよ」


渚沙  「誤解もなにも……りんかがリョータに告白するなら、それ以上どこに誤解の余地があるっていうの?」


りんか 「そ、それは……」


りんか 「わ、わかった! それならわたし、やっぱり止める! もう、リョー君に告白はしないからっ。だからっ……」


渚沙  「そんなこと言って! さっき、リョータと神社の話、してたんでしょ!?」


りんか 「あっ……う……。それは……」


渚沙  「あたしも、あのとき神社にリョータがいたって、知ってるわ」


りんか 「う、嘘……」


渚沙  「リョータがあそこにいたのなら、りんかが告白するとかしないとか、もう関係ないじゃないっ!」


りんか 「で、でも……リョー君からその話を聞いてるなら、なぎも話してもらってるんだよね?」


りんか 「わたしが好きだろうがなんだろうが、リョー君が好きなのは――」


渚沙  「だから、そんなの……誰にもわかんないじゃないっ!!」


りんか 「だ、誰にも、わからない……って?」


渚沙  「リョータがあたしに嘘ついてるなんて、あたしだって思ってない!」


渚沙  「だけど、今は本当にあたしのことが好きでも……これから先のことは、誰にもわからないわ!」


りんか 「そんなの……それは、そうだけど……」


渚沙  「どんどんりんかが好きだって気持ちを思い出して、今のりんかも凄く可愛くて……」


渚沙  「きっとリョータは、りんかにまた惹かれていくんだわ……」




りんか 「そんなの! それこそ、わかんないじゃない!」


りんか 「なぎは勝手だよ! リョー君の彼女は、なぎなんだよ!?」


りんか 「わたしは、なぎに負けたのっ!」


りんか 「せっかくだから教えてあげるけど、今日だってわたし、リョー君に振られたんだから!」


りんか 「“渚沙が好きだからりんかとは……”って、一切躊躇いなく、バッサリだよ!!」


りんか 「それなのに、なぎはリョー君にそんなに想ってもらえてるのに!」


りんか 「いったい、なにが不満だって言うのっ!!」


渚沙  「そ、そんなこと……言ったって……」


渚沙  「あたし、自信ないよ……」


渚沙  「引きこもりのオタクだし、なかなか素直になれないし……素直になったかと思うと重たいし……」


渚沙  「リョータは、なんでこんな女を選んだの……?」


渚沙  「あたし、全然わかんないよ……」




りんか 「……プチーン」


渚沙  「……り、りんか?」


りんか 「なぎ? わたしにだって、我慢の限界っていうものが、あるんだよ?」


    (to be continued…)