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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 12-2

第十二話『自信がないの、でも負けたくないの』 (2)




    俺は考えごとをするために、自分の部屋に引きこもっていた。


涼太  「渚沙が泣いてないのはいいことだけど……こんな状況、いつまでも続けてられないぞ」


    それは、俺の身が持たないということもであるけど、それ以上に……。

    ……こんな誤魔化しは、いつまでも続かない、ということだ。

    今は一時的にりんかが喧嘩相手になることで、渚沙の気持ちを逸らしてくれているけど……。

    それは、りんかが身体を張って渚沙の気を紛らせてくれているだけだ。

    りんかが機転で稼いでくれたこの時間で、俺がなんとかしなくちゃいけない……。


涼太  「はぁぁ……そうは言っても、ほんと、どうしたもんかなぁ」


    一人で頭を悩ませていると、いきなり勢いよく部屋のドアが開いた。


涼太  「うわあ!?」




    開いたドアから、渚沙とりんかが競うように飛び込んできた。


涼太  「な、なにごと!?」


りんか 「お菓子焼いたの! 食べて!」


渚沙  「まずはあたしの食べてよ!」


    よく見ると、二人は手にクッキーの入った器を持っていた。二人の自作らしい。


りんか 「わたしが先だよ! わたしの方が先だったでしょ」


渚沙  「先に焼けたのはあたしのクッキーだったでしょ!」


りんか 「先に部屋に入ったのはわたしだもん」


渚沙  「同時だったわよ!」


涼太  「お、おい。そんなことでケンカするなよ」


渚沙&りんか 「そんなことってなによ!?」


    「そんなことってなによ!?」


涼太  「ひいっ!?」


    なんで俺が怒られるんだ?

    というか、りんか……機転を、きかせてくれた……んだよな?


渚沙  「だいたい、りんかのクッキー砂糖多すぎなんじゃない!? そんなの食べたらリョータが病気になるわよ!」


りんか 「お菓子なんだから甘い方がいいに決まってるじゃない!」


りんか 「リョー君だって甘いの好きだよね!?」


涼太  「そりゃ嫌いじゃないけどさ……」


りんか 「ほらー!!」


渚沙  「リョータ、ダメだって。ほんとに病気になるから」




りんか 「ま、真面目な顔で注意しないでくれる!?」


渚沙  「それに、リョータにはスウィートよりビターなクッキーの方が似合ってるわよ」


渚沙  「大人でふか~い関係のあたしたちにはね」


涼太  「お、おお……」


りんか 「むぐぐぐぐぐぐぐぐっ!」


渚沙  「ふふふ。ほら、リョータ、あーん♪」


涼太  「え? いや、それはさすがに……」


渚沙  「隙あり!!」


    ズボッ!!

    開きかけた口に、素早くクッキーが押し込まれてきた。


涼太  「むぐぐぐっ!?」


渚沙  「どう~? 美味しいでしょ?」


涼太  「むぐぐぐぐぐ!」


    口がいっぱいで喋れん!


りんか 「苦すぎない? 口直しに甘いのどーぞ♪」


    ズボッ!!


涼太  「むぐうう!?」


    今度はりんかのクッキーが!?


りんか 「どう? 甘くて美味しいでしょ~?」


涼太  「む、むぐぐぐぐぐうっ!!」


    ちょ、こんな状態で口押さえたら息できねーだろ!!


渚沙  「ちょっと! なにするのよ!? 無理矢理口に押し込むなんて非人道的だわ!」


りんか 「そっちが先にやったんでしょ!!」


涼太  「むぐぐぐぐう……」


    く、苦しい……。


渚沙  「あれ? リョータの顔が青くなってる?」


りんか 「息してない! マウストゥーマウス!」




渚沙  「待ちなさいっ! それは彼女のあたしが!!」


りんか 「ちょっと、邪魔しないで!!」


涼太  「むぐう……」


    し、死ぬ……。

    (to be continued…)