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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 12-3

第十二話『自信がないの、でも負けたくないの』 (3)




涼太  「あー、死ぬかと思った」


    俺の命は通りすがりの星里奈によって救助された。


星里奈 「人の脳は、5分以上酸素が行かないと死ぬんだぞ?」


りんか 「そ、そうなんだ……」


渚沙  「ご、ごめんなさい……」


涼太  「クッキーで窒息死なんてしたらいい笑いものだぞ……」


    まあ、実際には死ぬとか死なないとかは大げさな話なんだけど、とにかく二人には深く反省してほしい。

    特にりんか……。なんか、だんだん悪ノリするのが楽しくなってきてないか?

    今の俺が堂々と言えば義理ではないのだが、それでもクッキー突っ込んで口塞ぐのはやりすぎだ……。


星里奈 「他人事だから黙っていようと思ったが、お前たち、さすがにやりすぎではないか?」


    星里奈が苦い顔で二人に忠言する。

    しかし、渚沙とりんかはふて腐れたような顔だ。


渚沙  「今回はやり過ぎたって反省してる。……でも」


りんか 「そうだよ。負けられない戦いがここにあるんだから」


星里奈 「……女の意地汚いところばかり見せていると、二人揃って愛想をつかされるかもしれんぞ?」


渚沙  「うっ……」


りんか 「そ、それは……」


涼太  「いや、まあ、この程度で渚沙に愛想つかすほど、やわな付き合いじゃないけどさ……」


渚沙  「リョ、リョータ……」


りんか 「ふ、フンだ! 若いころの惚れた腫れたなんて一時の気の迷いも多いもんね!」


りんか 「明日には、リョー君の好きな人も変わってるかもしれないよ?」


りんか 「ねー、リョー君?」


涼太  「いや、特にその予定はないけど……」


星里奈 「ほう」




渚沙  「っ……」


    バッ!


りんか 「えっ!? あ、ちょ、なぎ!?」


    なぜか渚沙の方が俺の言葉に怯んでその場から逃げ出した。


涼太  「……やっぱり、今の俺の言葉で渚沙を説得することはできないんだなぁ……」


りんか 「もう、わけがわかんないよ」


りんか 「なぎ、わたしの前では、リョー君にああされたい、こうされたい、こんなことしてもらったって話、するんだよ?」


りんか 「なのに、なぎ自身はリョー君と二人きりでちゃんとした話もできなくなってるなんて、そんなバカな話ないよ」


    横で成り行きを見守っていた星里奈が、呆れたようなため息をついた。


星里奈 「……なかなか、難儀なことになっているな」


涼太  「面目ない……」


星里奈 「まあいい。余計な口出しはしないつもりだ。ただ私の手が必要になったら、そのときは呼べ」


涼太  「……ありがとう、星里奈」


星里奈 「礼には及ばん」




りんか 「じゃ、じゃあ、わたしも行くね」


    りんかと星里奈はそう言って、居間から去っていった。


涼太  「ううむ……」


    いったい、どうやれば俺の気持ちは渚沙に届けることができるんだろう……。

    いくら悩んでも、答えらしい答えが思いつくことはなかった。

    (to be continued…)