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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 14-1

第十四話『あたしはずるをしたから…』 (1)




りんか 「な、なぎ……いつから、いたの……?」


渚沙  「ずっといたわよ」


涼太  「開き直るなよ……」


渚沙  「リョータがコソコソ家を出て行くから付いてきたんじゃない」


涼太  「コソコソしてねーだろ。先に誘いを突っぱねたのは渚沙じゃねーか」


渚沙  「う、うるさい、うるさい! だいたい他の子とデートしてるのにコソコソしてない方がおかしいのよ!」


    渚沙は完全に駄々っ子モードだ。


りんか 「ち、違うんだよ、なぎ。リョー君はわたしに付き合ってくれてるだけで、これはデートじゃないの」


    当初言ってたことをひっくり返すくらい必死に、りんかがフォローしてくれようとしていた。


涼太  「りんかはもうすぐ帰らなくちゃいけないだろ? だから思い出作りに町をぶらぶら回ってただけだよ」


渚沙  「りんか、帰るんだ」


    渚沙が、意外そうにりんかを見つめた。

    そのリアクションに、りんかの方が驚いている。


りんか 「帰るに決まってるでしょ? あたしの学園だって、始まるんだから」


渚沙  「そ、そっか……」


    色んなことでいっぱいいっぱいになっていて、渚沙はりんかが帰るなんてことまで考えられなかったのかもしれない。

    でも、りんかはもうすぐ帰るのだ。

    確実に。この町をまた出て行く。


渚沙  「………」


    渚沙は、どうしていいかわからなくなったというように黙り込んでしまった。


りんか 「よければさ、なぎも一緒に思い出作りしない?」


    黙り込んでしまった渚沙を、りんかは笑顔で誘った。


渚沙  「え? あたしも一緒に?」


りんか 「うん。そもそも最初はその予定だったし」


りんか 「なぎも一緒の方が、昔のこともたくさん思い出せるかもしれないしね」


りんか 「……どう、かな?」


渚沙  「……別に、いいけど」


    気まずそうにしながらも、渚沙は頷いた。


りんか 「じゃあ決まり! 一緒に行こう!」


渚沙  「う、ん……」







    結局、当初の予定通り三人で町を回ることになった。


渚沙  「………」


    しかし、成り行きが成り行きだから、渚沙は気まずそうだ。


りんか 「この道も、昔一緒に歩いてたんだよね」


    逆に、りんかはあまり気にしてないみたいで飄々としている。

    先ほど感傷的になりすぎて流してしまった涙も、すっかり乾いてわからなくなっていた。


涼太  「そうだな……。うん、俺たち、この道を小さい頃からずっと使ってたし」


    りんかと初めて手を繋いだ道……。

    その道を、彼女になった渚沙と、再会したりんかと一緒に三人で歩く。

    なんだか、この気持ちをなんと表現すればいいのかわからないけど、とにかく不思議な気分だった。


渚沙  「……ね、ねえ、あたし邪魔じゃない?」


    渚沙が居心地悪そうな顔でボソッと訊いてきた。


涼太  「なにを気にしてるんだおまえは。最初から三人の予定だったって言ってるだろ?」


渚沙  「そうなんだけど……」


りんか 「なぎは全然邪魔なんかじゃないよ。もう姉妹みたいなものなんだから、仲良くしようよ」


渚沙  「だ、誰が姉妹よ!!」


りんか 「誕生日も同じ、生まれた町も同じ、小さい時はずっと一緒だったとなれば……」


りんか 「むしろ、同一人物まであるね!」


渚沙  「同一人物!?」


涼太  「なんだその超理論」


りんか 「つまり、わたしはなぎで、なぎはわたしなんだよ!」


渚沙  「なにが、つまり、なのかさっぱりだわ……」


りんか 「ということはだよ? なぎのモノは、わたしのモノでも、あるんじゃないかな?」


渚沙  「はい……?」




    そう言うが早いか、りんかは俺の腕に自分の腕を絡めて来た。


涼太  「お、おい……」


    そんなふうにすると、りんかのボリュームのある膨らみが、嫌というほど俺の肘に押しつけられるんですが。


渚沙  「ちょっとリョータ! なに鼻の下伸ばしてるのよ!?」


涼太  「は、鼻の下なんて伸ばしてないって!」


渚沙  「伸びてる! ゾウの鼻みたいに長くなってるから!」


りんか 「悔しかったら、なぎも同じことすればいいじゃない」


渚沙  「ぐぬぬぬぬぬぬ……」


渚沙  「あ、あたしだって……!」




    渚沙が、張り合うようにりんかとは反対側の腕を取った。


涼太  「お、おい……」


    (to be continued…)