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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 16-8

第十六話『勇気の魔法』 (8)




りんか 「なぎ、ありがとう。そういうわけで、リョー君はお返しします」


渚沙  「え? ……あ、う、うん」


    ただぎゅっと拳を握りしめて推移を見守っていた渚沙は、突然話題を振られて少し慌てていた。


りんか 「わたし、フラれちゃったね」


渚沙  「…………」


    なんと答えていいかわからず、渚沙は居心地悪げに身じろぎした。



りんか 「あーあ、残念。わたし的に、結構ガチな告白だったんだけどなぁ~」


    それは、100%嘘で、でも100%本当だったと思う。

    りんかは自分の恋が成就するとは少しも思っていなかった。

    でも同時に、勇気を振り絞った本気の告白でも、あった。


渚沙  「……そ、その、あたし……」


りんか 「そんな申し訳なさそうな顔しないで、なぎ」


りんか 「お互い全力を出した結果じゃない?」


りんか 「格闘家だって、試合が終わったら対戦相手と握手するでしょ? ナイスファイト!」


渚沙  「……そ、そんなこと、あたしから言えるわけない、でしょ?」


りんか 「あはは、そりゃそうか」


りんか 「うん。でもね、なぎ」


りんか 「わたし、リョー君にフラれちゃったよ」


渚沙  「……え?」


りんか 「だから、大丈夫だよ……?」




りんか 「わたし、危なくないよ? ……安全だよ?」


渚沙  「……り、んか?」




りんか 「……だから……だから、ね。……これからも、仲良く、して、ほしいなぁ……」


    りんかの涙ながらの言葉を聞いて、ようやくりんかが本当に望んでいたことがわかった。

    なぜ、りんかは振られるとわかっていて、俺に告白することにこだわったのか。

    “わたし、危なくないよ? ……安全だよ?”

    ……全部ぜんぶ、自分が俺に振られるためだったのだ。


渚沙  「りんか……。あたし、あたし……」


渚沙  「ご、ごめんなさい……。ごめん。あたし、本当にバカだ……」


渚沙  「自分の、自分のことばっかりで……」




渚沙  「りんかのことなんか、ちっとも理解できてなかったのに、思い込みで、自分勝手なことばっかり……」


りんか 「ううん。わたしもね、全部自分のためなんだよ……?」


りんか 「わたしが、みんなと仲良くしたかったから、だからやったことなの」


渚沙  「……で、でも」


りんか 「……正直ね、腹は立ったよ。なんでこの子が選ばれて、わたしばっかり辛い思いしなきゃいけないのかなぁって」


渚沙  「……ぐす……うぅ、ご、ごめんなさい」


りんか 「でもね、なぎはリョー君が選んだ人だから」


りんか 「それに、三人でお出かけして、買い物するのも、デートするのも……とっても、楽しかったから」


りんか 「これからも、そういう楽しい日がずっと続いたらいいなぁって、思ったの」


渚沙  「りんか、ごめん。本当に反省してるの。ごめんなさい……」




りんか 「なぎのことはね、許さないよ。わたし」


りんか 「サボってないか、今後も小まめにチェックしに来るんだから」


渚沙  「……うん……うん。ありがとう、りんか」


りんか 「あは。許さないって言ってるのにお礼言われるなんて、なんか変だね」


渚沙  「ううう、うぅ……。りんか……りんかぁ……」


りんか 「よしよし」


りんか 「なぎもよくがんばった。おぬしはまだまだがんばりが必要じゃが、がんばったことには違いあるまい……」




りんか 「……うん。今だけは、胸を貸してあげるよ」


渚沙  「りんかー……!」


    渚沙はりんかに抱き着き、りんかはいつまでもその頭を撫で続けた。


りんか 「よしよし、よしよし」


    その二人の姿はまるで、本物の姉妹のように俺には見えた。

    (to be continued…)