──要町(かなめまち)
郊外にある小さな街。
高台にそびえ立つ社が、観光名所として静かな賑わいを見せる…そんな街。
この社は「天使が降り立つところ」と言う触れ込みで、雑誌等で紹介されている。
『天使はこの地に降り立つけれど、決してこの地に住まうことは叶わない』
そんな謎かけのようなワンフレーズが残っているだけ。
でもそれが外の人たちの興味を引いたのか、メディアで紹介されるときには
決まってそのフレーズが添えられていた。
ただの伝承…と片づけてしまえばいいのだけれど、その天使が張ったと言われる
『結界』が今もまた…その社を覆っている。
──確かなのは、その不思議な置き土産だけ。
あからさまに超常的な代物ではあったけれど、この街に住んでいる人にとっては
物心付いたときからそれがあってあたりまえだったため、今では誰も気にしなくなっていた。
|