──要町(かなめまち)

郊外にある小さな街。
高台にそびえ立つ社が、観光名所として静かな賑わいを見せる…そんな街。
この社は「天使が降り立つところ」と言う触れ込みで、雑誌等で紹介されている。

『天使はこの地に降り立つけれど、決してこの地に住まうことは叶わない』

そんな謎かけのようなワンフレーズが残っているだけ。

でもそれが外の人たちの興味を引いたのか、メディアで紹介されるときには
決まってそのフレーズが添えられていた。

ただの伝承…と片づけてしまえばいいのだけれど、その天使が張ったと言われる
『結界』が今もまた…その社を覆っている。

──確かなのは、その不思議な置き土産だけ。

あからさまに超常的な代物ではあったけれど、この街に住んでいる人にとっては
物心付いたときからそれがあってあたりまえだったため、今では誰も気にしなくなっていた。
 











初夏…そろそろ梅雨の足音が聞こえてきそうな頃。

この町では、12年に一度だけ開かれるお祭りがあります。
そのお祭りの開催が間近に迫り、静かな賑わいを見せていた頃…季節はずれの雪が降る。

微かに積もったその雪は、翌日には溶けて無くなってしまって…大して気に留めるほどでもありませんでした。
前のお祭りの時も、こんな雪が降ったのですが…そのことを覚えている人はほとんどいません。

そんなささやかな事件を機に、お祭りまでの12日間が始まります。
主人公と4人のヒロイン達が、この12日間を通じて、どんな風に過ごしていくのか? …そんなお話です。

一日は割とゆったりと…ヒロイン達とのコミュニケーション中心に経過していきます。