タイトル : 『未定』
 作 者 : 【アマ枠】Cuore=Tane様

------------------------------------------------------------
 
「さっき廊下で言っていたことって本当に起こることなのかな?」
神坂が俺に向かって疑問をぶつける。
「さあ……。 でも高峰先輩の不幸の占いは100%はずさないって言うし…。 どうなんだろうなぁ?」
 
 
***数分前の出来事***
 
 
「不吉な出来事が近いうちにおこります。」
廊下でばったり出会った女性に突如としてそんなことを言われた俺と神坂。
その女性は、あの不幸の占いを100%はずさないことで有名な高峰先輩だった。
 
俺たちは廊下でばったり出会った高峰先輩の話を聞き入った。
 
不吉な出来事というのは…。
「あなたの友達の身に大きな変化が訪れるでしょう。」
 
ただそれだけ…。
友達の身に大きな変化が訪れる?
俺と神坂は目と目を合わせる
 
ややあって、俺たちは準のことを思い浮かべてしまった。
 
「準が男になるとか…?」
考えたくもないことだったが、そんな恐ろしいことをどうしても思い浮かべてしまう俺。
あの準が男になることなんかあるのか?(いえ、元々男なんですが…。)
 
スポーツ刈りの準、ズボンを穿く準…想像するだけでも…。
スカートを穿きなれている準の姿をいつもみているせいか、
…。 いや、俺は何を考えているんだ?
 
神坂が俺に向かって
 
「でも、準君が男に戻ったら、それはそれで、すごいことだよね。」
 
そうだよな。 準が男に戻ることは寧ろ不幸な出来事ではなく、喜ぶべき出来事なのでは?
でも、高峰先輩は不幸な出来事を占い100%はずさない先輩。
 
「でもなぁ〜。 ありえないと思うけどなぁ〜。 準が男に戻るなんて事…。」
(だから、元々、男なんですw)
 
 
***放課後***
 
 
「今日こそ、あのにっくき春姫をやっつけてやるんだから!」
 
不吉な笑みを浮かべながら、春姫の様子を伺う杏璃。
いつもは、すぐ春姫にあしらわれて悔しい思いをしてきた杏璃。
「今日こそは!」
 
春姫の一瞬の隙をつく!
「えいっ!」
 
その声とともに俺はその一部始終を興味深く眺めていた。
 
どこから手に入れたのか? いや、そもそもどうやってこの校舎内にそれを持ち込んだのか?
艶かしい液体が入った瓶を春姫に向かって投げる。
ところが手元が狂い…。
 
瓶が高溝に向かってしまう。
杏璃はあわてて叫ぶ!
「それをよけて〜!」
 
まったく、何をやっているんだか…。
高溝はよけるどころか?その瓶に向かってやって来ている。
 
杏璃は激怒し、
「そこのあんた!さっさと避けなさいよ!」

…。 自分で投げておいて、避けろはないだろ!
高溝はそれが聞こえたのか?
何かが飛んでくるのをひょいとかわした。
 
「お、あの歩く避雷針と言われる八輔が避けたぞ!」
つい声を出したために杏璃に気がつかれる。
 
「雄真! あんた、そこで何をしているのよ!」
杏璃がふと目をそらしていた隙にその瓶が渡良瀬に当たってしまう。
 
それに気がついたときには時すでに遅かった。
艶かしい液体はべっとりと準の体についてしまった。
「あっ…。 …。」
 
これを見て、杏璃はすぐさま、俺に怒りの目を差し向けた。
「雄真! あんたのせいだからね。」
 
…。 ってか、お前が投げたんだろうが…。
 
杏璃は怒って帰ってしまった。
ってか、あれ、何の液体だったんだ?
もしかして高峰先輩が言っていたことって「この事」だったのか?
 
その後、渡良瀬は「きゃ〜恥ずかしい!」と言いふらしながら帰っていったけど…。
 
…。 それを聞いている俺のほうが逆に恥ずかしくなっているのが…無性に情けなかった。
 
 
***明くる朝***
 
 
「きゃ〜。 準君。 それどうしたの〜。」
その声が聞こえた時に、
準も男に戻ったのか?と思ったのだが…。
 
準の姿を見た瞬間。 度肝を抜かれた。
 
「あら、雄真。 おはよう。」
 
はい?
思わず、目をパチクリさせた俺。
今の準だよな???
…。 男なのに、なぜか胸が出ていたぞ…。
 
もしかして…。 昨日の液体は…。
 
杏璃が来るのを確かめて、杏璃に昨日の液体の件のことを聞いてみた。
相変わらず、俺を睨んでいる。
が、その目は涙であふれていた。
「…あ、あんたのせいだからね。」
 
「…そんなことより、あの液体。 なんだったんだ?」
俺は今のこの状況を打開することを念頭に入れていた。
 
「…あんたのせいだから…。」
そう言いながらも涙を流し続ける杏璃。
 
俺は思わず、杏璃の手を引き、屋上に連れて行く。
周囲は何事かと思ったことだろう。
多分帰ってきた時には、俺は悪者扱いされているだろうなぁ〜。
だけど、これだけはしっかり解決しておかなければ、準は二度と男には戻れなくなる。
 
屋上に着いた俺たち。
未だに俺を睨み続ける杏璃。
確かにあの時、軽率に声を出してしまった俺にも責任はある。
だが、バツが悪いのか…。 睨み続けながらも涙を流す杏璃。
 
俺はそんな杏璃を思わず抱きしめてしまった。
「…あっ…あんた、何やっているのよ!」
 
「…悪いことをしたって思っているんだろ? だから泣いているんだろ!」
「…あんたが悪いんだから…。」
 
また、それか…。 これじゃあ、いつまで経っても埒があかない。
「俺が悪いことをしたのかもしれない。 でも、そうなるってことをわかっていてやる方がもっと悪いと俺は思うけどな。」
 
俺は杏璃を窘めた。
準がああなったのは、俺にも責任がある。 だけど、そうなるってわかっていてやった杏璃に全く責任がないわけではない。
 
杏璃は、大粒の涙を流し始めた。
「…。 春姫に負けるのが悔しくって、男にしてしまえば、あたしが頂点に立てるかな?って…。」
 
…。 なるほど…。 安易な気持ちで思わずやってしまったことだったんだな…。
「そんなせこい真似して頂点に立ってても、俺はちっとも嬉しくない。」
 
…俺って、何ちゅうことを口走っているんだ?
しかし、杏璃はその言葉にムッときたのか?
「な、なによ。 あたしの気持ちなんて知らないくせに!」
 
でも、俺は杏璃を諭す。
「杏璃の気持ちはわかるよ。」
「わかってないもん!」
「わかっているって!」
「絶対、絶対、わかっていないもん!」
 
まるで、イタチゴッコだな…。
「じゃあ、どうすれば、杏璃の気持ちがわかるんだ?」
「え?」
…。 また、俺の暴走が始まっていく…(^^ゞ
 
「どうすれば、杏璃の気持ちが俺にわかるのか?って聞いているんだ。」
思わず、俺は杏璃に向かって声を荒げてしまった。
 
「…そんなこと、あたしにだってわからないわよ!」
杏璃は俺を突き放し屋上の扉を開け、階段を下りていった。
 
…俺は、完全に悪者扱いされるな…。 はぁ〜。
 
キーンコーンカーンコーン
…チャイムか…。
俺はとぼとぼと自分の教室に向かう。
 
俺の教室に担任が来て、準の変貌振りに驚いてしまい、思わずギックリ腰を患い、担架に運ばれていった。
かわいそうに…。 チーン。
 
ホームルームが終わり、あわただしさが戻る。
準は正真正銘の女の子になってしまった。
 
その姿を見た八輔は、準に惚れてしまい、どえらいことに…。
 
はて、どうしたものか…。
 
1時間目が終了した後、俺は単身、高峰先輩の元へと向かった。
高峰先輩に準がどうしたら、元に戻るのか?聞いてみた。
 
高峰先輩は「元に戻れるかどうかはわからない」と答えた。
 
こうなったら、杏璃に頼るしかない。
 
自分のクラスに戻った俺。
何とかして準を元通りに戻したい。
そういう思いがあった。
 
授業も身に入らず、放課後になるのをひたすら待った。
 
 
***放課後***
 
 
チャイムとともに俺は杏璃のクラスへ駆け込む。
クラスメイトは何事か?と俺を見入る。
 
俺が来たことを知った杏璃
杏璃に対して俺は、クラスメイトが見つめる中、土下座をした。
 
クラスメイトは目をパチクリさせる。
杏璃は俺の突然の行動に動けないでいた。
俺の姿を見れば、杏璃は逃げるかもしれない。
 
だから敢えて俺は土下座した。
 
クラスメイトも杏璃も俺も黙っている。
重い空気が張り詰める。
 
杏璃が重い口を開いた。
「あっ、あんた何やっているのよ!」
 
言葉にいつもの勢いがない。
 
「準を直す方法を教えてほしい」
俺は土下座をしながら杏璃に言う。
 
「し、知らないわよ! 直す方法なんて…」
 
…ナンダッテ?
俺は土下座をしたまま固まった。
 
そこに何故か準が通りかかった。
 
「あれ? 雄真、何をやっているの?」
俺は土下座したまま振り向いた。
 
「じゅ、準」
 
杏璃も俺の声に反応して準の方向に振り向いた。
 
俺は準に申し訳なく言う。
「男に戻れないかもしれないんだと…」
 
準はそれを聞くと
「そうなの? 私はこのままでいいんだけど…。」
 
…俺は思いっきり頭を抱えた。
 
杏璃もそれに同乗して
「じゃ、よかったんだ〜。」
 
さしもの俺もその言葉にキレた。
 
「いいわけないだろ!」
 
突然の大声にクラスメイトがざわつく。
杏璃は涙目、準はびっくりした表情で俺を見つめる。
 
「元に戻すこともわからない薬を作って、迷惑かけて…。」
 
その時、準の身体から煙が…。
 
「な、なんだこの煙は?」
 
準はロボットだったのか!(違うって)
 
 
***十数分後***
 
 
ジリジリジリジリジリリリリリリリ…。
 
火災報知機作動!
どえらいことに!
 
「ケホケホケホ…。」
周りから咳き込む声が…。
 
消防車が駆けつけ消火活動!
 
 
***またまた十数分後***
 
 
沈下! (早!)
 
最初に見えたのは準。
 
…。 む、胸がなくなっている!
男に戻ったんだ! よかったよかった。
 
しかし、周りを見ると…。 女が男になって、男が女になって…って、
 
げ!俺も女になっている!
 
「ど、どうなっているんだ! これは!」
杏璃に問い詰めると
 
「陽の光で薬が溶け出してしまったんだと思う。」
 
な、なんだって〜。
 
「あら、雄真、女の子になったんだ。 いいなぁ〜」
「よくない!」
 
チャンチャン(完)
 
終わらせるな〜!
 
※この後、元に戻るまでに1週間かかったそうで…。
雄真はすっかりオカマになってしまったんだとか…。 哀れです。(笑)
 
 
お終い。
 

 
注:この物語は『Cuore=Tane』様の想像力でお送りしました!