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タイトル : 『はぴねすれいん』
作 者 : 【アマ枠】詩奈祭り様
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それはまだ雄真が、春姫とろくに会話もしたことのないころのお話…
ハチ 「おう! 準、雄真帰ろうぜ」
ホームルームが終わり、雑談に花を咲かせていた俺達にハチが声をかけて来た。
準 「あら、もう帰るの? あんたも会話に参加しない?」
まだ帰るには早いとばかりに準が言う。
ハチ 「なんの話をしてたんだよ?」
雄真 「それがさあ、こいつこないだ編入してきた女子の中で誰が一番かわいいかなんて聞いてくるからさあ」
ハチ 「へえ、準も女の子気になるんだ?」
ニヤニヤしながら言う。
準 「なんか棘のある言い方ねぇ、私はただ純粋にかわいい物が好きなの。 かわいいって言ったらやっぱ男より女でしょ?」
ハチは心底あきれたような顔をした。
ハチ 「あっそう…で? 雄真は誰が好きなんだ?」
雄真 「ちょっとまて、何で好きに変化してるんだ? かわいい子って話なんだけど」
と言うと、さも当然と言わんがばかりに言い放つ。
ハチ 「だってお前、かわいかったらやっぱ好きにならねぇ?」
雄真 「そうか? そんな簡単にはいかないだろ…人の心ってもんは」
ハチ 「そうかねぇ…まあそうかお前にはかわいい妹がいたっけ、
あんな子いたらちょっとやそっとのかわいい娘にはなびかないか?」
雄真 「あのなぁ…」
準 「すももちゃんは確かにかわいいわね…」
ハチ 「だよなあ! あんなかわいい娘が妹だったら俺もう何もいらないよ」
コブシを握り、力説するハチ。
まあ確かにすももはかわいい、でも妹と言っても義妹なのでそんな言い方をされるとコメントに困る…
雄真 「取りあえずすもものことは置いといて…ハチは誰がかわいいと思うんだよ」
ハチ 「俺か? 俺はやっぱり神坂さんかな…なんたって学園のアイドル! 美人で成績優秀、運動神経抜群! まさに完璧超人!」
やっぱり神坂さんか…俺も彼女は気になっているけど、高嶺の花だよな実際。
準 「そうねぇ…春姫が一番よね…杏璃もかわいいと思うけど、春姫に比べると微妙よね」
杏璃 「誰が微妙ですって?」
なんの前触れもなく突然現れる杏璃。
雄真 「うわぁ! でたぁ!」
慌てる俺達。
杏璃 「あのねぇ人をお化けか何かのように言わないでよ…で、何の話?」
ハチ 「いやあ、クラスで一番かわいいのは誰かなって…」
準 「そうそう、うちのクラスのかわいさツートップと言ったら、春姫と杏璃じゃない?」
必死にごまかす俺達。
すもも 「兄さん迎えに来ましたよ、一緒に帰りましょう。」
空気を読まずに話しに割り込んでくる我が妹。
杏璃 「それはうれしいんだけど、それだと微妙って言葉が出てこないわね…」
雄真 「いや…それは…」
ハチ 「決して柊さんが微妙なんて言ってないから!」
雄真 「お、おい!」
準 「あ〜ぁ」
杏璃 「ふ〜んやっぱりそんなことだろうと思った…パエリア!」
雄真 「うわ、馬鹿! 何する気だ!」
杏璃 「決まってるじゃない…あんた達に思い知らせてやるのよ…」
目が怖い。
すもも 「兄さん帰らないんですか?」
マイペースな妹。
杏璃は呪文の詠唱を始めた。
雄真 「俺帰るわ、じゃな」
慌ててすももの手を取り教室を後にした。
ハチ・準「裏切り者〜!!」
ドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーンンンン!!!!!
すもも 「何か爆発音が聞こえます」
雄真 「お前らの死は、決して無駄にはしない…」
何て馬鹿なことを言いながら、そのまま下駄箱に向かい、昇降口から外へ出た。
何だか雨が降りそうな空模様だ。
すもも 「兄さん、私傘取ってきます。」
置き傘してあるんです、何て言いながら教室に戻ろうとするので、俺は
雄真 「じゃあ俺先に行ってるから」
と言って歩きだした。
すもも 「すぐ戻ってきますから〜」
待ってて欲しいんだろうか。 でもあいつも子供じゃないんだし…
少し悩んだあげく先に行くことにした(気持ちゆっくりめで)。
ポツ、ポツ、ザザー
案の定雨が降り出した。
雄真 「ひー! すももを待ってればよかったな…」
走って雨宿りできる場所を探す。
ちょうどいい大きさの木を発見。 駆け寄ると木の下には先客がいた。
春姫 「もう…やっぱり降ってきた…お母さんが今日は雨なんか降らないなんていうから…」
お? 神坂さんが愚痴ってるなんて…珍しいな…って言うか聞いたことないぞ。
雄真 「どうしたの? 神坂さんが愚痴なんて…」
話しかけてみると、神坂さんは
春姫 「わ! わ! いいいいつからそこに!」
何てかなり動揺した様子。 何か今日の神坂さんは新鮮だ。 当然動揺したところも始めて見た。
雄真 「今来たばかりだけど…学園のアイドルも愚痴なんて言うんだ。 いつもにこにこしてるイメージだったのに意外だ」
思ったことを素直に口にしてみた。 すると、
春姫 「ごごごごめんなさい、わわたし帰らなきゃ!」
急に雨の中に飛び出そうとする、神坂さん。
雄真 「ちょ、ちょっと!」
俺は慌てて神坂さんを捕まえようと手を伸ばした。
春姫 「きゃ!!」
俺の手は神坂さんの二の腕を掴んだ。 後ろを振り返り、困惑の眼差しを向けてくる神坂さんに
雄真 「こんな雨の中に出たら風邪引いちゃうだろ、今妹が傘持ってくるからそれまで待ちなよ」
と言うと、神坂さんは観念したかのように弱弱しく頷き、俺の隣に来た。 すると突然背後から声がした。
小雪 「二人で仲良く雨宿りですか…」
見ると傘を差した先輩がいつの間にか後ろに立っていた。
春姫 「小雪さん!?」
雄真 「うゎ! ここ小雪先輩、いいいいつからそこに!」
今度は俺が動揺する番だった。
小雪 「くすくす…仲が良いのはいいことです…」
何て言い微笑を浮かべながら、校門から学校の外へと行ってしまった。
雄真 「相変わらず不思議な人だな…あ!」
先輩傘持ってたじゃん…
春姫 「どうしたの? 雄真くん」
雄真 「いや、先輩の傘に神坂さんを入れてもらえばよかったかなって」
…ん? 雨宿りしてから初めてちゃんと話したような気がする…ってなんで俺を名前で呼んでるんだ?
春姫 「あ…そうだね…でもわたしも急に小雪さんが出てきたから、びっくりしちゃって考えがそこまで回らなかった。」
にこにこと笑顔をみせる神坂さん。 素直にかわいいと思えた。
雄真 「あのさ…今俺を名前で…」
すもも 「兄さ〜ん! 傘を持ってきましたよ〜」
また空気を読めない妹登場。
すもも 「あら、神坂先輩こんにちは」
春姫 「小日向さんこんにちは」
お? 二人は知り合いだったのか。
すもも 「先輩も傘ないんですか? よかったらこの傘お貸ししますよ」
春姫 「え? でもこれを借りちゃったら二人が…」
すもも 「いいから、いいから」
無理やり傘を渡すすもも。 神坂さんは遠慮していたが、すももの押しに負け傘を受け取った。
春姫 「えっと…小日向さんありがとう。 雄真くんごめんね」
と言って帰っていった。 結局俺をなぜ名前で呼ぶのかは謎のまま。
すもも 「もう、兄さん! いくら神坂先輩が美人だからって、デレデレしすぎです!」
怒られた。 デレデレしてたつもりは無いんだけどな…
雄真 「そんなことないだろ…なに怒ってんの?」
すもも 「怒ってなんかいません」
あきらかにむくれている…
雄真 「だいたい傘貸しちゃって…まあ俺も貸してあげるつもりだったけど…俺達どうすんの?」
すもも 「いいじゃないですか、わたしとも雨宿りしましょう」
何て話している最中、またも背後から声がした。
小雪 「二人で仲良く雨宿りですか…あれ? 女の子が変わってる…」
見るとさっき帰ったはずの先輩がいつの間にか後ろに立っていた。
すもも 「高峰先輩!」
雄真 「うゎ! ここ小雪先輩、いいいいつからそこに!」
小雪 「かわいい後輩のために傘を持ってきてあげたんですよ…さあどうぞ」
と俺に傘を渡すと、そそくさと帰っていった。 まあ何にせよありがたい。
雄真 「じゃあ行こうかすもも」
すもも 「はい、兄さん!」
一緒の傘に入ったすももは、家に着いてからもしばらくご機嫌だった。
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後日二人のあいあい傘を撮った写真を小雪先輩に見せられて、有無を言わさず先輩の手伝いをさせられた。
あと、準とハチに殴られた。
それともう一つ…
神坂さんが気軽に話しかけてくれるようになった。
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