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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 11-2

第十一話『発見と深まる謎』 (2)




渚沙  「はー……やっぱり家が一番だわ……」


涼太  「旅行帰りのオカンか、おまえは」


    とりあえず、家に帰り着いたものの――

    渚沙は完全にぐったりしちゃってる。


渚沙  「なんとでも言って。もう山なんか二度と行きたくないわ。山なんて全部消えてなくなればいいのに」


涼太  「無茶を言うなよ。まあ、俺も疲れたけど」


渚沙  「でも、星里奈はマジでどうかしてるわ。身体を動かし足りないから、素振りしてくるとか……」


渚沙  「なにでできてるの? なにを食べて大きくなったの?」


涼太  「だいたいおまえと同じものじゃないかな」


    なにしろ、俺たちみんな、昔からこの蒼森家にお世話になってる身だからな。


涼太  「まあ、発育に多少の差はあるが……」


渚沙  「…………っ!」




渚沙  「ど、どこを見て言ってるの!? そりゃ、星里奈には負けるけど!」


渚沙  「巨乳ばかりじゃバランスが悪いのよ! 通常サイズがあるからこそ、巨乳も微乳も輝くの!」


涼太  「それを力説する必要あるのか……?」


    というか、まだ元気が残ってるじゃないか。


陽鞠  「ただいまです」


涼太  「ああ、おかえり」


    よかった、帰ってきてくれたか。

    姿をくらまされたらまた山登りだからな……本当によかった。


渚沙  「おかえりー、あんた汚れてるからさっさとお風呂に――って、なに普通に帰ってきてるの!」


涼太  「あっ! そうだ、神宮を見つけたら連絡しろって言っただろ!」




陽鞠  「うっ、ごめんなさい。つい、うっかり……」


涼太  「…………」


渚沙  「ま、まあ、わかればいいんだけど」


    そんなしょんぼりするのはずるいよなあ。

    陽鞠は、俺たちと同い年、同学年。

    でも――幼なじみの間では、一人だけ年下扱いを受けている。

    小柄だし、性格もおっとりしてて、強気な渚沙や星里奈と比べれば一歩後ろに引いてるし。

    妹っぽいというか、マスコットっぽいというか。

    陽鞠も俺らを兄だの姉だのって呼んでるしな。

    だから、あまり殊勝な態度を見せられると俺たちは強く出られない。

    俺たちの間じゃ、陽鞠が妹で星里奈が姉って感じかな……。


涼太  「それで……神宮は?」


陽鞠  「無事に見つけて、町まで送ってきたんですけど……」


陽鞠  「さりげなく家に連れ込もうとしたんですが、逃げられちゃいました」


涼太  「連れ込むって……」


涼太  「とりあえず、無事に下山はしたんだな。それならいいんだ」


渚沙  「陽鞠はハイキング感覚で登ってるけど、あの山も迷ったら大変だものね」




渚沙  「あたしなんて、一人だったら余裕で遭難できるわ」


涼太  「なにを自慢げに……」


陽鞠  「なぎ姉、よかったら陽鞠が鍛えてあげましょうか? 山岳ゲリラもびっくりの体力馬鹿に仕上げてみせますよ」


渚沙  「仕上がりたくないわ!」


    山岳ゲリラって……なんだ、その発想。


陽鞠  「でも、あの神宮りんかってお姉さん……不思議ですね」


陽鞠  「どうして、陽鞠の能力が通じたんでしょう……でも、あの人は確かに嘘をついてました」


陽鞠  「お兄さんたちが嘘をついたときと同じように、はっきりわかったんです」


涼太  「……そうか」


陽鞠  「何者なのか気になりますね……山奥に連れ込んで、“無事に帰りたければ正体を白状しろ”とか、脅してみます?」


涼太  「おまえ、たまにヤバすぎるよな!」


    なんで、普段はおとなしいのにこうも発想がぶっ飛んでるのか。


涼太  「でも、確かに放っておけないよなあ……」


    もうこれで、全員分の能力が神宮に通じたことになる。


陽鞠  「特に大きな嘘が、“観光で来た”ってところですよ」


陽鞠  「そこになにか、重要な真実が隠されてる――そんな気がします」


涼太  「…………」


    陽鞠は、嘘を見抜くだけじゃなくて、なんというか、勘も鋭い。

    ……神宮りんかには嘘がある。

    俺たちがまだ知らない正体が隠されてる。

    少なくとも、なにも知らない普通の女の子って可能性は皆無だ。

    陽鞠が嘘を感知した、ってことは、本人に隠し事があるってことだしな。

    ……まあ、それは今考えても仕方がないので、一旦置いておくとしよう。


涼太  「ところで陽鞠、おまえ補習が始まってるの知ってて、帰ってこなかったな」


陽鞠  「ぎくぅっ!」


渚沙  「そうだったわ! なにが“ぎくっ”よ! あたしだってサボリたいのに羨ましい!」


涼太  「渚沙、話が逸れてる。……神宮のことも気になるけど、まずは陽鞠のことだ」


涼太  「今日はとりあえず、俺たちから説教だ。いいな」


陽鞠  「あ、あううう……」


    何日も姿をくらまして、心配もかけたんだしな。

    たまには兄っぽい存在として、お説教の一つもさせてもらおう。

    (to be continued…)