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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 共通ルート 13-3

第十三話『いざ川遊び!』 (3)




    というわけで、無事にお使いを済ませて、りんかとホタルを連れて再合流――

    もちろん、みんな二人の参加を歓迎してくれた。


渚沙  「いい、神宮さん? 川は突然深くなってたりするからね。プールじゃないんだから、油断しないこと」


りんか 「へー、そうなんだ。それはスリルに満ちてるね」


涼太  「…………」


    HPを回復させた渚沙が、偉そうに神宮に川での遊び方を教えてる。

    渚沙も、ろくに川で遊んだことないくせに……。


ホタル 「陽鞠先輩、戻ってたんですね……」


陽鞠  「はい、強制送還されました。昨日は登校したんですけど、ほたるんには会ってなかったですね」


陽鞠  「お兄さんたちが陽鞠の再逃亡を恐れて、シークレットサービスのように周囲を固めていたので、会いに行けませんでした」


ホタル 「車のボンネットに手を置いて走りそうですね……」


    陽鞠め、なんて人聞きの悪いことを……別に固めてなかったし。

    しかし、ホタルはシークレットサービスの変なとこを知ってるなあ。


祭   「よーし、全部揃ってる。トガー、お使いご苦労! かみやんとたるたるもお手伝いありがとう!」




りんか 「か、かみやん……?」


ホタル 「たるたるってあだ名、さすがにどうにかならないでしょうか……」


涼太  「あきらめたほうがいいぞ」


    祭のネーミングセンスも、一度決めたら引き下がらないところも、変えようがない。


歩   「お昼まではもう少し時間がありますね。みなさん、遊んできてはどうですか?」


涼太  「そうだな、せっかく神宮たちも来たんだし」


りんか 「やっほーう! 川だ川だ! これが川なんだね!」


りんか 「行くよ、なぎなぎ! 後れを取るな!」


渚沙  「ええっ、あたしも行くの!? あたしはビニールプール専門なんだけど!」


りんか 「なぜ川に入るのか! そこに川があるからだよ!」


渚沙  「理由になってないわーっ!」


    これもあきらめたほうがいいな……抵抗は無意味だ。


陽鞠  「陽鞠も行きますか。ふっ、素人だけで川遊びは危険ですし」


涼太  「プロの川遊びなんてあるのか……?」


祭   「実は私がプロだ! さーあ、遊ぶぜ!」


ホタル 「私はプロの記者らしく、記録係に徹しましょう……」


涼太  「おまえもプロじゃないから」


りんか 「ぎゃー! 水、冷たい! 手が凍りそう!」


渚沙  「って、それをあたしにかけないで!」


陽鞠  「山のお水はもっと冷たいですよ! ほらほら!」


    なんだかんだで、渚沙と陽鞠は神宮と馴染んできてる?

    神宮のマイペース、恐るべしだな。

    あの筋金入りのインドア派、東渚沙さんを川遊びに誘い込むとは……。


祭   「ぐぎゃーっ! 冷たっ! あうあう、めっちゃ苔生えてる岩踏んじゃったよ!」


ホタル 「嵐野先輩のあざといドジッ子アピールを激写……」


    おいおい、祭はなにを転んでるんだ。

    まあ、この暑さなら濡れてもすぐに乾くだろうけど。

    そして、転んだ祭やみんなをスマホで撮影してるホタル。

    あいつ、あの写真を妙なことに使わないだろうな?



歩   「ふふふ、若い人たちは楽しそうでいいですね」


涼太  「あなたは俺らより一つ歳上なだけでしょ」


涼太  「…………ん?」


涼太  「若いのに、楽しそうじゃない奴もいるな」


涼太  「そんなとこでなにしてるんだ、星里奈?」


星里奈 「……気にするな」


    星里奈は、川岸に近いところにいる。

    しかも、なんだか腰が引けちゃってるなあ。


星里奈 「胸の大きい私が川に入ると、みんなの邪魔になるかもしれないから、遠慮してるんだ」


涼太  「どんな小川だよ。星里奈が百人入っても余裕があるだろ……」


    あと胸の大きさは関係ない。突っ込まないけど。


涼太  「まあ……星里奈はアレだからな。まだ、アレなのか」


りんか 「アレってなーにー!?」


涼太  「ああ、実は星里奈は……」


星里奈 「それをしゃべると、沈めるぞ。永遠に」


涼太  「……なんでもないです」


渚沙  「あ、あたしも星里奈とそっちにいたいわ……」


陽鞠  「あははは、逃がしませんよ、なぎ姉!」


りんか 「きゃーっ、陽鞠ちゃん、わたしに水かかってるよ!」


涼太  「…………」




泉実  「まあ、みんな楽しそうでなによりだね」


泉実  「約2名、無理矢理連れてこられた人もいるみたいだけど、来てみれば楽しいもんだよね」


涼太  「泉実は、あそこに混じらないのか?」


泉実  「あれだけの女子に混じる度胸はないなあ」


泉実  「金髪しか愛せない僕でも、こんなにたくさんの女子が楽しそうにはしゃいでる絵ヅラには、ちょっと惹かれるしね」


涼太  「そうだな、これはハタから見てるのが正解だ」


涼太  「つっても、泉実はあいつらの中に紛れ込んでも全然違和感ないだろうけどな」


泉実  「ああ、ハーレムに見えちゃうかな? でも僕、そんなイケメンでもないんだけどなあ」


涼太  「…………」


    泉実君、いまいち自分の顔のつくりがわかってないんだろうか。

    それはともかく、泉実の言うとおり、来てみればやっぱり楽しいもんだ。

    昔から何度も来てる場所でも、みんなで来ればこれだけ楽しめるんだから、やっぱり“みんな”でってのは大切だよな。

    (to be continued…)