昨日、渚沙とりんかの話を聞いてしまってからずっと、気持ちがざわついて落ち着かない。
涼太 「……うん」
一晩ゆっくり考えたが、やはり正直に盗み聞きしてしまったことを正直に渚沙に話して謝ろう。
その上で、俺が好きなのはりんかじゃなくて渚沙だ、ということをちゃんと伝えなければ。
りんかを意識すると、正直、今はまだ胸が疼く。
……だけど、それもちょっとずつ忘れて行けるはずだ。
涼太 「俺が昔、りんかが好きだった記憶がすでに戻ってることも、たぶん伝えた方がいいんだよなぁ……」
この件については、少し気が重い。
渚沙にとっては、どうあってもその事実自体が楽しい話にならないから……。
だけど、きっと渚沙の不安の根っこはそこにあって、これ話題を避けて通ることは、きっとできないのだ。
俺は確かに昔、りんかのことが好きだった。
だけど、今付き合っていて、好きな女の子は渚沙だ。
涼太 「そのことを、ちゃんとした言葉で本人に伝えなくちゃだな」
涼太 「……うん。告白……うん」
……渚沙に改めて好きだ、と告白をすると決めただけで、緊張で胸が苦しくなる。
やっぱり結果の見えない告白に打って出られた渚沙の勇気は本当に凄い、と今更のように尊敬してしまう。
同時に、そこに込められた自分への好意の大きさを思うと、ついつい嬉しさで胸がドキドキしてしまう。
涼太 「……いかんいかん。一人で惚気ている場合じゃなかった」
どんなシチュエーションで、どんな言葉で、渚沙へ“好き”を伝えるのか。
正直、悩みだしたらキリがない。しかし……。
凝った演出よりも、今の渚沙にはきっと、少しでも早い俺自身の言葉が必要なのだと、思う。
涼太 「……覚悟を決めよう」
涼太 「よし」
そうと決まれたば、あとは行動するしかない。
出陣だ。
居間に向かうと、ちょうど渚沙の姿があった。
涼太 「渚沙」
渚沙 「あ、リョータ」
俺のことを見つけると、パッと表情をほころばせる。
やっぱり俺の彼女、めっちゃ可愛いなぁ……。
渚沙 「あ、あの……さ」
しかし、渚沙はすぐに緊張した面持ちになってしまう。
涼太 「どうした?」
渚沙 「えっと……今日、りんかとなにか話した?」
渚沙がぎこちなく訊いてきた。俺が告白されたかどうかを気にしてるんだろう。
涼太 「い、いや、特に話はしてないけど。……ど、どうかしたのか?」
しまった。とっさにしらばっくれてしまった。
あとでこの話するんだった……。
渚沙 「ううん、どうかしたってことはないんだけどね。……話してないなら、別にいいの」
涼太 「そ、そうか……」
渚沙を不安にさせていると思うと、申し訳ない気持ちが沸き上がってくる。
ええい、男は度胸だ!
涼太 「そ、そうだ。これから二人でどこか行かないか?」
渚沙 「え? これから?」
涼太 「そ、そう。デ……デートってやつだ」
渚沙 「デデッ、デート? う、うん、もちろんいいけど」
渚沙 「ど、どこに連れてってくれるの……?」
涼太 「……あ」
渚沙 「“あ”ってなによ、“あ”って……」
渚沙 「さてはあんた、行き先考えてなかったわね」
涼太 「……す、すまん」
告白のことで頭がいっぱいになっていて、その前準備がすっぽり抜け落ちていた。
渚沙 「まったくもう。……そうね、じゃあ、河原は?」
涼太 「河原? ……泳ぎにか?」
渚沙 「泳ぎでもいいし、ただのんびりするんでもいいけど。……水着は持ってくけどね」
涼太 「水着……」
渚沙 「あ、今エッチなこと考えたでしょ?」
涼太 「そ、そんなわけないだろ。水着ごときで今さら……」
涼太 「俺は、その中身だって知ってるんだし……」
渚沙 「バ、バカ、なに言ってんのよ……こんなところで……」
渚沙の顔が真っ赤になる。そんな渚沙の反応に、俺もまた照れてしまった。
涼太 「ご、ごめん……」
涼太 「えっと、じゃあ、行くか? 河原」
渚沙 「うん」
渚沙 『あっ……』
涼太 「うん……?」
渚沙の奴、急に“ひみつでんわ”を使ったりして、どうしたんだ?
渚沙 『エッチなこと……考えちゃダメ、だからね?』
渚沙 『絶対、ダメだから。……絶対よ?』
涼太 「あんまりしつこく言うと、“フリ”ってやつみたいだぞ」
渚沙 「そ、そんなんじゃないからっ!」
(to be continued…)