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ポケット・ストーリー

『約束の夏、まほろばの夢』 渚沙ルート 11-6

第十一話『たとえヒロインになれなくても』 (6)




渚沙  「……え? あ、あの……」


りんか 「なぎって、本当に自分勝手だよね」


りんか 「それに、短気なくせに後ろ向きだし、行動的かと思ったら明後日の方向に走り出す」


りんか 「わたしも、いくつか昔のこと思い出したよ。……なぎは、昔からずっとそう」


渚沙  「うっ……ううぅ……」


    ……りんか?

    ついぼうっと二人のやり取りを眺めてしまったが、りんかのまとっている雰囲気が一気に変わった気がした。


りんか 「いいのはちょっと顔が可愛いくらいかな? でも、この町だと大した特徴でもないよね。可愛い人、多いし」


渚沙  「ぐっ……」


    りんかの奴、もしかしてわざと渚沙を挑発しているのか……?


りんか 「スタイルも大したことないくらいだし……。むしろ見た目の勝負は、ハンデがあるくらいかな?」


渚沙  「な……ななっ……」


りんか 「せりとかひまちゃんとか、おっぱい凄いもんね? ……まあ? わたしはそれよりも大きいんだけどね?」


渚沙  「――――――」




りんか 「あーあ、こーんな“貧乳”が彼女なんて、リョー君かわいそう……」


渚沙  「そ、そこまで小さくないわよっ!!」


渚沙  「だいたいね、あんたたちが大きすぎんのよっ!」


渚沙  「女子の平均値ぶち抜いてる奴ばっかりじゃないのっ!!」


りんか 「ほほほ、負け犬の遠吠えは耳に心地いいわね」


渚沙  「なっななな……なんですって……?」


りんか 「ふふっ……」


    なんか、話がどんどん下らない方向に脱線していってる……。

    これ、狙ってやってるんだとしたら……すげーな、りんか。


りんか 「そうだね、そうしたら……なぎの残念なおっぱいで寂しい思いをしているリョー君は、この胸で誘惑しちゃおうかな」


渚沙  「ダ、ダメ! 絶対!」


りんか 「ダメって言っても、リョー君はわたしの魅力に釘付けだよ?」


    りんかは固辞するように胸を張る。それだけで、その膨らみはぶるるんとたわわに揺れていた。


渚沙  「くっ……」


渚沙  「もう! バカバカ! どうしてリョータは巨乳好きなの!?」


    いや、俺、巨乳好きなんて一度も言ってないんだけど……。


渚沙  「な、何よ、巨乳ぐらい……!!」


渚沙  「あたしだって、寄せて上げれば結構アレだからっ!」


りんか 「ふふん、たかがアレ程度」


    りんかは余裕の笑みだ。その誇らしげに張った胸がぷるんぷるん揺れている。


渚沙  「ぐぬぬぬぬ……」


渚沙  「な、なにおう! あたし、まだ成長期だし!」


りんか 「ちなみに、わたしもまだ成長期だけどね」


渚沙  「ぐぬううう……」


渚沙  「な、何が巨乳よ、リョータのバカーーーーーー!!」


涼太  「いやいや、いい加減にしてくれ。俺、別に巨乳マニアってわけじゃないから」


    さすがに収集が付かなくなってきたところに、俺は割って入った。



渚沙  「リョータ……」


りんか 「リョー君、どうしてここに?」


涼太  「そ、外まで声が聞こえてたんだよ。それで何事かと思って様子を見に来たら……」


    そう言うと、二人は気まずそうに顔を伏せた。


渚沙  「い、今の……聞いてたの?」


涼太  「と、途中からだけど……」


渚沙  「うわあ……!」


    渚沙は頭を抱える。


涼太  「ゴメン、また覗きみたいな真似して」


りんか 「こっちこそゴメン。みっともないところ見せちゃって」


りんか 「あのね、リョー君、今の話は売り言葉に買い言葉というか……」


渚沙  「あ、コラ! 勝手にリョータと話さないで!」


りんか 「な、なによそれ!?」


渚沙  「リョータも、りんかの胸ばっか見てちゃダメよ!」


渚沙  「あんまり大きくても年取ったら垂れるだけなんだから!」


りんか 「なっ……ぬぁんですってぇぇぇぇ!?」


渚沙  「リョータ、あたしは絶対垂れないから安心してね~。おほほほほ♪」


    なんだか変な方向にヒートアップしてきてしまっている。

    いや、陰湿にいがみあってるよりは全然いいんだけど。


りんか 「リョー君、わたしだって絶対垂れないよ!」


渚沙  「垂れるわよ!」


りんか 「垂れないってば!!」


涼太  「や、やめろって二人とも……」


りんか 「リョー君は黙ってて!」


渚沙  「そうよ、黙ってて!」


涼太  「は、はい……」




渚沙  「むぐぐぐぐぐぐぐぐ……」


りんか 「ぬうううううううう……」


    メチャクチャ睨み合ってる。

    だけど、りんかの機転のお陰なのか、言い争ってはいても、どこか子供の喧嘩のような雰囲気が二人を包んでいた。

    (to be continued…)